Ubuntu 20.04 LTSでは、セキュリティの強化範囲をアプリケーション層やオペレーション層に拡大したと説明する。通常のUbuntuはOSやデスクトップ環境として5年間のサポート期間を設けているが、Canonicalの商用向けサポートサービスであるESMを追加することで、10年間のサポート期間に3万超のパッケージを含めた。
その理由としてFabel氏は「大企業ユーザーはセキュリティ範囲の拡大を求めている。オープンソースを下支えするベンダーは少ない。われわれはそのギャップを埋めていく」ためだと語った。オペレーション層に対して、Fabel氏は「マネージドサービスをあらゆるアプリケーションやクラウド、Kubernetesに提供していく」と説明する。
具体的には、分散ストリーミングプラットフォーム「Apache Kafka」、ネットワーク機能仮想化(NFV)でのネットワークサービス環境を自動で構築する「MANO」、全文検索エンジン「Elasticsearch」、ログ管理の「Graylog」、モニタリングツール「Prometheus」、データ可視化ツール「Grafana」、リレーショナルデータベースの「PostgreSQL」と「MySQL」、時系列データベース「InfluxDB」という9つに対するマネージドサービスの提供を表明。顧客の需要に基づいて対応アプリケーションは拡充する予定だ。
Linuxディストリビューションとして大きな存在感を示しているUbuntuだが、Canonicalの説明によれば、金融やメディア、ゲーミング、通信分野に使用実績が拡大している。英国の大手電気通信事業者であるBTは5GのキーコンポーネントとしてUbuntuを採用し、T-MobileもベアメタルのセルフサービスにUbuntuを採用。Canonicalは早期から分散オブジェクトストア「Ceph」の開発活動を支援しており、「Cephの上流開発はUbuntuで行われてきた」(Fabel氏)という。
遺伝子配列を研究するイギリスのWellcome Sanger Instituteは「55PBのデータを抱えており、年間30%の割合で増加していた。過去は競合他社のソリューションを使っていたが、Ubuntuに切り替えることで3PBの増量を4日間で終えている」(Fabel氏)。グローバルの拡大に伴い、日本市場の売り上げも過去3年間で30%の成長を見せているという。
![Canonical Japan リージョナルセールスマネージャー 柴田憲吾氏](/storage/2020/04/23/1cb30d992a82fed8953f0b6547f687f7/200423_canonical_2.jpg)
Canonical Japan リージョナルセールスマネージャー 柴田憲吾氏
国内ではヤフーがUbuntuとIaaS環境構築管理ソフト「OpenStack」を社内データセンターで併用し、商用サポート、構築サービスを5年間導入してきた。SBIグループで金融サービス事業者向けにシステムを提供するSBI BITS(港区、従業員数451人)もUbuntuを採用している。
Canonical Japan リージョナルセールスマネージャー 柴田憲吾氏は「両社に共通するのはコストの削減とインフラの継続的運用」と説明。Fabel氏は「Ubuntuの起源はデスクトップにある。その立ち位置はユーザーの存在は忘れていない」とコミュニティーに対する意見も添えた。