デジタルリテラシーが低い社員でも使えるように--「kintone」導入企業の一工夫

柳谷智宣

2020-04-28 07:40

 企業が抱えるよくある課題を「kintone」でどう解決するのかを紹介する本記事、第3回は、デジタルリテラシーが低い社員にシステムを使ってもらえない、という壁に直面した企業が課題を解決したケースを取り上げる。

新しいシステムを活用してもらうには工夫と努力が必要

 業務システムをリプレースしたり新規導入したりする際、最も重要なのは社内で使ってもらうことだ。せっかくコストをかけて入れたのに、使ってもらわないと無駄になるだけでなく、データが分散してしまう原因にもなる。経営陣からの命令となれば強制的に使うしかないが、デジタルリテラシーが低いと、活用しきれないことが多い。

 デジタルリテラシーの高い人は簡単に使いこなせるので理解しにくいかもしれないが、デジタルが苦手な人にとっては、これまで慣れ親しんできた業務フローを変えるのは、とても負担が大きい。新しいシステムを導入する際は、とにかくユーザーが使いやすいように考えることが重要になる。

 例えば、あるIT会社では、営業報告をkintoneアプリで行っているが、自分の名前を入力させないようにした。デジタルリテラシーが低い人は、データを照合する際、文字列がきちんと一致しなければならないということがわかっていない。「山田太郎」と入力しなければならないところ、苗字だけだったり、ローマ字やカタカナにしたり、姓名の間にスペースを入れたり、人によってはそのスペースが半角だったりする。そこで、ルックアップ機能を使い、自分の名前を呼び出して正確な文字列が入るようにしている。そのおかげで、デジタルが苦手な人でもきちんとしたデータを入力できるようになった。きちんと入力しろ、と命令してもミスが起きるだけなのだ。

 ある建築関係の企業では、社長がkintoneの導入を決定。自ら頑張って高度なkintoneアプリを作成して、プロトタイプを公開した。すると、社員から面倒くさいという声が寄せられてショックを受けることになった。

 そこで社長は、シンプルな案件アプリを作成し、粗利率が悪いと赤くなるようにした。たったこれだけだが、社員の態度が一変。赤くなった数字を社長に見られたくないという意識が生まれ、目標を意識するようになった。結果、kintoneアプリが浸透し、売上高も向上した。

粗利率が低いと赤く表示されるようにしただけで、売り上げが向上した。画面はイメージ
粗利率が低いと赤く表示されるようにしただけで、売り上げが向上した。画面はイメージ
キャプチャ:筆者

 ある宿泊業を手がける企業のシステムが老朽化し、kintoneにリプレースすることになった。「Notes」という古いシステムを使っていたのだが、画面の構成を可能な限り似せたのだ。当然、合理的でない操作も多かったはずだが、ユーザーがすぐに使えるようにすることを優先したからだ。システムの見た目から生まれる拒否反応を和らげることで、3日間でシステムの移行を完了できた。

 システムを構築する社員とkintoneアプリを使う現場職員との間に信頼関係を構築することも重要だ。あるリネンサプライ事業を手がける企業が新規事業を始める際、kintoneを導入した。当初、よかれと思って作った帳票はまったく使ってもらえなかった。担当者は、信頼関係の欠如が原因と分析。現場に日参してニーズをヒアリングし、反映することで、信頼関係を構築した。その結果、kintoneを使ってもらえるようになった。

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