会社から紙をなくす方法
上記3つの原因を解決し、会社から紙を無くす方法が1つだけある。それは、電子化後の紙文書をできる限り廃棄すること(電子データを原本にすること)である。
しかしその際は、専門家などの意見も参考のうえ廃棄の取捨選択を慎重に行い、廃棄を決めた文書に関しては速やかに、かつ確実に処分する必要がある。
参考として、取捨選択をする際、事前に準備すべき事項をあげておく。
1.法律で紙保存が義務付けられている文書の確認
紙文書として保存が義務付けられている文書をリストアップしておく(例:仕分け帳などの帳簿に関してはスキャナ保存は認められていないなど)
2.文書管理規定、廃棄管理表の整備
保存年限や廃棄に関する事項の文書化や廃棄管理表による履歴管理の整備を実施しておく
3.JIS規格を満たす電子化プロセスの構築
JIS Z 6016(紙文書及びマイクロフィルム文書の電子化プロセス)や、JIS X 0902-1(情報及びドキュメンテーション−記録管理−)など、産業製品に対した規格や測定法などが定められている日本の国家規格(Japanese Industrial Standards:JIS)の要件を満たす電子化プロセスを構築する
(例:完全性維持:スキャン品質の確保、真正性維持:電子署名、タイムスタンプ、ブロックチェーンの導入)
最後に1つデータを紹介する。今年4月に「LINE」を介して行われた厚生労働省「新型コロナ対策のための全国調査」において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でリモートワークを実現できた人はわずか5.6%という結果が判明した。その理由として多かったのが、原本である紙文書主体の業務であり、かつ規定上外部に持ち出せないため職場に行くしかないという厳しい現実だったのである。
紙文書は、その存在そのものが業務効率を著しく低下させる要因であるだけでなく、事業継続対策や働き方改革などを実現するリモートワークの大きな障壁とも言え、喫緊の課題であると言える。
(第2回は6月上旬にて掲載予定)

- 難波 孝(なんば たかし)
- クニエ インシデントリスクマネジメント担当
- マネージャー
- 公認不正検査士(CFE)、文書情報管理士、ファイリングデザイナー。 大手監査法人を経て現職に至るまで文書管理コンサルタントとして15年以上の経験を有する。数多くの不正、不祥事、海外訴訟(eDiscovery)対応に携わった経験を生かし、企業の文書管理に関して業務効率改善のみならずリスクマネジメントの観点からも支援している。