しかし、頭の痛い問題となるのが、ライセンス料とライセンス管理です。社内使用のPCを持ち出せる場合はまだしも、新たにテレワーク用のPCを配布したり私物のPCを利用したりする場合には、その分だけ新たなライセンス料が発生します。認証作業やライセンスキーの発行など、運用管理の面でも専任のIT担当者が必要になるでしょう。
近年になって、クラウドアプリケーションのオフィスツールにも手軽で使いやすいものが登場しています。ライセンス料が安く、OSやハードウェアに依存することなく、かつ管理者がシンプルに運用できます。
作業のたびにPCにファイルをダウンロードしなくても、クラウド上の文書や表計算ファイルを直接編集できるものもあります。クラウド上で直接編集できれば、面倒な文書の版管理の必要もありません。テレワーク環境の本格的な整備をきっかけにして、オフィスツールを新たに選び直すことを検討してもよいかもしれません。
ファイルやデータは分散させない
次に文書やファイルの保管や共有方法について考えてみます。まず候補に上がるのが「Dropbox」「Microsoft OneDrive」「Box」などのオンラインストレージの利用ではないでしょうか。
こうしたクラウドサービスは手軽に利用開始できるのですが、一度使い始めてしまうと別のサービスへの移行や既存の社内データとの統合が難しいという弱点があります。
メールやチャット、会議システムなどのコミュニケーションツールとのファイルの受け渡しや取り扱いが容易かどうかも大事なポイントです。ウェブ会議の最中に、急に必要になった書類を共有するために、オンラインストレージにログインしてファイルを探し、ダウンロードしてから会議システムで使うという一連の作業は、思いのほか時間も手間もかかります。
また、テレワーク向けの一時的なオンラインストレージの利用は、ドキュメントやファイル、データの分散化を招きます。情報漏洩や機密保持の観点でも問題です。企業の大事な情報資産は、どんな場合でも一元的に統合管理されるべきです。社内で運用しているファイルサーバーにリモートアクセスできる仕組みを構築するか、もしくはファイルサーバーをクラウドサービスに移行して一元化を図りましょう。
テレワークでも有効なプロジェクト管理
開発部門や研究部門など、プロジェクトやタスクの厳格な進捗管理が求められる業務はもちろんのこと、営業やマーケティング、バックオフィスの担当者も複数の仕事を同時進行させています。職場中心の仕事であれば頻繁に打ち合わせをして密に情報共有できますが、テレワークに移行した場合はどうしてもコミュニケーションが停滞しがちになり、職場では何とかなっていたことも想定以上にうまく進まなくなることがあります。このような事態をさけるため、テレワーク環境の整備にあわせてプロジェクト管理システムを本格的に導入することをお勧めします。
プロジェクト管理システムは、プロジェクトやタスクごとにダッシュボードを作り、その中で進捗や必要なアクション、スケジュールなどがリアルタイムで確認できます。文書やデータ、ファイルの受け渡しや参加メンバーがコメントでディスカッションすることもできます。