新型コロナウイル感染症対策で優先度が向上したIT戦略テーマとしては「従業員の働き方改革」が最多。業種や従業員規模を問わずに約3分の1の企業で優先度が上がったという。
以降は従業員規模別で傾向が分かれ、5000人以上の企業では 「システムの性能、信頼性の向上」が2位、「事業継続計画、災害対策の強化」が3位。全体2位の「業務コストの削減」を上回っている。規模が大きい企業ほどビジネスの円滑な継続のため、ITを強化する傾向にあるとしている。

優先度が向上したテーマの設問は、2019年8月実施の「IT投資動向調査2020」とあわせている(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)
活用を緊急検討するデジタル技術としては、コミュニケーション、コラボレーションの高度化、ワークスタイルの変革といった「従業員エンパワメント」領域が高く、従来検討比率が高かったロボティックプロセスオートメーション(RPA)の推進などの「オペレーション最適化」領域を上回ったという。
一方、「顧客エンゲージメント」「製品、サービスの競争力向上」の領域は相対的に低く、アフターコロナを見据えたデジタル化技術活用という視点での課題を指摘している。

デジタル技術活用を緊急検討する分野(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)
実際に急遽新規、追加の導入、または3カ月以内に予定する製品やサービスとしては「ウェブ会議、ウェビナー」が最多。「グループチャット、社内SNS」「オンラインファイル共有」など、テレワーク実施にあたる変更が大きい業務系サービスが続くという。

急遽投資対象になったIT製品、サービス(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)
コロナウイルス感染症対策に伴うIT部門の組織的対応も聞いている。約半数が「プロジェクトの停止、延期」「特別予算の計上」を実施、予定しており、ともに該当とした回答が約4割。多くの企業が単なる投資の縮小ではなく、IT戦略を組み替えているとしている。

IT部門で実施、予定した組織的対応(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)
在宅勤務での業務の質的な変化は、「ない」が約2割。多くが変化を実感しているという。30代以下で高い傾向があり、「書籍、ウェブ/メールマガジンによる情報収集」「ウェブセミナーなどへの参加」といった時間の増加が3割を超えている。若い世代が環境変化を前向きに捉え、有効活用しているとしている。

在宅勤務における業務の質的な変化(出典:ITR「コロナ禍の企業IT動向に関する影響調査」2020年4月調査)