本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、NTTデータが一定期間に無償提供する地方公共団体向け「特別定額給付金支給業務自動化ソリューション」を取り上げる。
簡単な導入作業で給付金支給業務の自動化が可能に
NTTデータは先頃、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う「特別定額給付金」支給業務を行う地方公共団体向けに、人工知能(AI)を活用した光学文字認識(OCR)処理で紙の資料をデジタルデータ化する“AI OCR”サービス「NaNaTsu AI-OCR with DX Suite」とRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツール「WinActor」、WinActorに関するeラーニングを、給付金支給期間である2020年5月1日から7月31日までの間、無償提供すると発表した。6月30日まで利用申し込みを受け付ける。
併せて、給付金申請書に「給付コード欄」を設けた推奨レイアウト、AI OCRにより自動で入力するための帳票定義、申請対応業務を自動化するためのWinActorシナリオの3点を提供。これにより、地方公共団体職員は簡単な導入作業のみで、給付金支給業務の自動化が可能となる。
特別定額給付金支給業務において、地方公共団体は、住民からの給付金申請を電子申請または紙の申請書により受け付け、データのシステム入力や支給審査を行い、入金処理まで実施する。
それに対し、今回の取り組みによって、AI OCRによる紙の申請書のテキストデータへの変換およびRPAによるテキスト、データのシステム入力、支給審査業務における突き合わせチェック、振り込みデータ作成などを自動化技術により補助できるようにした。(図1、2)

図1:特別定額給付金支給業務自動化ソリューションの利用イメージ(出典:NTTデータ)

図2:特別定額給付金申請書をAI-OCRで読み取った結果の例(出典:NTTデータ)
ちなみに、NaNaTsu AI-OCR with DX Suiteは、地方公共団体を相互に接続する行政専用の「総合行政ネットワーク(LGWAN)」を介して各種行政事務サービスを提供する「LGWAN-ASP(Local Government Wide Area Network-Application Service Provider)」を利用できる地方公共団体向けのサービス。手書きの各種申請書類をスキャンした画像ファイルを、LGWAN上に構築したAI-OCRサービスにアップロードするだけで、テキストデータに自動変換できるようになる。2019年11月1日の提供開始以来、100以上の団体で利用されている。
また、WinActorはNTTグループで開発された純国産のRPAツールで、さまざまな操作を「シナリオ」として記録し、自動化することにより、定型的な繰り返し作業や大量データを扱う作業を正確に再現することが可能。さらに、既存システムに手を加えることなく、これまで人手で行ってきた複雑な操作や複数システムにまたがるデータの投入を自動化し、人手作業の効率、品質、コストの大幅な改善につなげることができる。