デル、新世代ストレージ「PowerStore」を発表--“データ中心型”アーキテクチャーを採用 - 9/10

渡邉利和

2020-05-15 11:17

 デルとEMCジャパンは5月14日、新アーキテクチャーのミッドレンジストレージシリーズ「Dell EMC PowerStore」を発表した。「データの時代」におけるさまざまな課題に対応すべく、両社の統合後に開発が始まったストレージ製品で、ストレージOSにコンテナーアーキテクチャーを採用するなど、最新テクノロジーを活用している点が特徴となる。

 EMCジャパン MDC事業本部 事業本部長の遠井雅和氏は「これまで集中型の専用アレイでさまざまなデータサービスのニーズに対応してきたが、“データ中心の時代”になってワークロードが多様化した結果、新たな要件に対応する新しいアーキテクチャーが必要になった」と開発の背景を語り、「新時代を担う新世代ストレージ」だと位置付けた。

 続いて、MDC事業本部 システム本部 ディレクターの森山輝彦氏は、Dell EMC PowerStoreのポイントとして「データ中心型」「インテリジェント」「順応性」の3点を挙げ、それぞれについて詳しく説明した。

 まず、データ中心型という点に関しては、「あらゆるワークロード」「最適化されたパフォーマンス」「妥協を許さない効率性」の3つの特徴が紹介された。ワークロードに関しては、FC(Fibre Channel)/iSCSIとNFS(Network File System)/SMB(Server Message Block)に加えてNVMe over Fabrics(NVMe-oF)もサポートし、コンテナー環境で永続的ストレージ領域として利用するためのコンテナーストレージインターフェースにも対応する。

 パフォーマンスに関しては、記憶媒体は全てNVMeベースでフラッシュまたはSCM(Storage Class Memory、具体的にはIntel Optaneをサポート)を利用できる。Intel Optaneに関しても、キャッシュとしてではなく高速なストレージメディアとして利用する想定だ。ノード(ストレージコントローラー)はアプライアンス当たり2台をアクティブ/アクティブで利用し、99.9999%(6-nines)の信頼性を追求したという。従来機種であるDell EMC Unity XTとの比較では最大構成時のスループットは7倍、レイテンシーは3分の1に低減しているという。

 効率性については、常時稼働のインラインデータ削減機能がサポートされる。重複排除とデータ圧縮が併用され、ハードウェアアクセラレーションを活用して圧縮効率を高めた結果、効率性の保証値が従来機種の3対1から4対1に向上した。

 物理的な構成としては、2ノード+ディスクエンクロージャーの組み合わせで1台の“アプライアンス”となり、ディスクエンクロージャーを増やしていくことでアプライアンスの記憶容量を増加させるスケールアップ型拡張と、最大4アプライアンスまでをクラスター接続するスケールアウト型拡張の両方をサポートする。最大構成時(8ノード/4アプライアンス)の容量は、物理3.59ペタバイト(実効11.36ペタバイト)に達する。

 インテリジェントは、機械学習(ML)機能を組み込んだ自動化/省力化機能のことを意味する。クラスター構成で利用する場合、各アプライアンス間で負荷が不均一になることが考えられるが、組み込み型のMLエンジンが各アプライアンスごとの利用状況を把握した上で自動的に最適化することができる。

 最後に、順応性に関しては「柔軟なアーキテクチャー」「柔軟なデプロイメント」「柔軟な消費モデル」の3点が挙げられている。アーキテクチャーでは、ストレージOSの「PowerStoreOS」がコンテナーベースのモジュラー設計となっている点がユニークだ。提供する機能ごとにモジュールが独立しているため、将来の機能アップデートや不具合修正が容易になると期待される。

 また、デプロイメントモデルとして標準デプロイメント(PowerStore Tモデル)とハイパーバイザーデプロイメント(PowerStore Xモデル)の2種類が用意される。標準デプロイメントではアプライアンスのハードウェアで直接PowerStoreOSを稼働させるイメージで、従来同様のネットワークストレージとして利用することが想定される。

 一方、ハイパーバイザーデプロイメントではハードウェア上でハイパーバイザー(VMware ESXi)が稼働し、その上でVM内に構成されたコンテナー環境でPowerStoreOSが動作する。そして、この場合は「AppsON」としてユーザーのアプリケーションをVMとして同じハイパーバイザー上で稼働させることができる。いわば、ストレージアプライアンスを汎用サーバーとして活用し、仮想サーバーをホストする物理サーバーとして扱うことができることになる。データ集中型のアプリケーションなどをAppsONで稼働させることが想定される。

 結果として、既存のHCI(ハイパーコンバージドインフラ)システムと同様の使い方が可能になるとも言えるが、一般的なHCIが「汎用サーバーをストレージとして使えるようにした」のに対し、ハイパーバイザーデプロイメントのPowerStore Xモデルは「ノード(ストレージコントローラー)のコンピューティングリソースを汎用サーバーのように活用できるようにした」形であり、いわば真逆の方向から同じゴールにたどり着いた、とでも言えそうな状況だ。

 このほか、ノードのアップグレードでは「Anytime Upgradeプログラム」が提供され、柔軟なアップグレードがサポートされるほか、同社が積極的に取り組んでいる消費モデル(従量課金制ソリューション)である「Pay As You Grow」や「Flex On Demand」「Data Center Utility」なども提供される。

 データ中心(Data Centric)型のコンピューティングアーキテクチャーとしては、従来のコンピューティングモデルである「コンピューティングが主で、ストレージは“周辺機器”」という位置付けを逆転させ、データを中核に据えてコンピューティングをその周辺に配置する形が提案されている。データ量が爆発的に増大し続けている現在、コンピューティングのためにデータを移動させるのは、バスやネットワークの帯域という観点からも、高速なデータ転送のために消費される電力量の観点からも、現実的ではなくなりつつある。逆に、現時点では汎用的なコンピューティングリソースをデータの側に分散配置する方がコストメリットを得られる状況だ。

 PowerStoreはミッドレンジストレージという位置付けだが、アーキテクチャー面ではデータ中心型のアーキテクチャーに基づいており、さらにワークロードとしてコンテナーをサポートするレベルにとどまらず、自身のストレージOSもコンテナーアーキテクチャーで実装するなど、随所に先進的な取り組みが見られる意欲的な製品となっている。今後主流となる「新世代ストレージ」の先陣を切る製品と位置付けていいのではないだろうか。

PowerStore Xモデルでサポートされる「AppsON」は、アプライアンスを汎用サーバーとして活用し、ユーザーアプリケーションを実行する仮想サーバーを統合することが可能になる。データに近いところでコンピューティングを実行するというコンセプトを自然に実装できる。

PowerStore Xモデルでサポートされる「AppsON」は、アプライアンスを汎用サーバーとして活用し、ユーザーアプリケーションを実行する仮想サーバーを統合することが可能になる。データに近いところでコンピューティングを実行するというコンセプトを自然に実装できる。

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