イベント中は5Gの産業におけるユースケースとして、スウェーデンのEricsson本社にあるデモエリアから、車のスマートファクトリーが紹介された。有線から5G接続に切り替えることでケーブルがなくなり、需要に合わせてフロアのレイアウトを自由に変更できる。
また、生産される車に組み込まれるモジュールは、車のライフサイクルに合わせて物流段階、そして出荷段階で自動化のために使われ、ユーザーの手に渡った後は、アクティベーションされて自動運転などで活躍する。最後には、車が廃棄された後の部品のリサイクル段階で、部品の使用年数などの情報をやりとりできるという。
なお、スマートファクトリー分野でEricssonは、Audiと協業し、5Gの「URLLC(Ultra-Reliable Low-Latency Communication)」という低遅延通信を活用して、製造の自動化、スタッフの安全性強化に役立てていることも紹介した。
Audiがドイツの工場でテストしている5G URLLC。無線区間1ミリ秒以下の遅延を実現する技術で、人の体が入るとすぐに動作を停止する様子を紹介した
さらに自社の5G機器の優位性として、用途によってネットワークを“スライス”することで、安全性や速度を担保するネットワークスライシング技術や、スペクトラム(周波数帯)シェアリング技術なども紹介した。
スペクトラムシェアリングは4Gと5Gのトラフィックを同じソフトウェアでサポートする技術。Ekholm氏は、8割の顧客が1年以内にEricssonのスペクトラムシェアリング技術を利用すると予想している。ケースの中に4G端末と5G端末が入っており、同じハードウェアで対応している
これらに加えて「持続性」も重要な特徴となる。Ekholm氏は、「ネットワークのロールアウト、その後の進化で消費電力量の増加を抑えることは、業界の重要課題だ」と述べた。これまでのネットワークシステムは、トラフィックの増加に伴い消費電力も増えるものだったが、Ericssonは、高密度なトラフィックがあるサイトではマッシブMIMO(Multi-input/Multi-output)を実装するなど、技術を精緻(ち)に配置することでネットワークの最適化を図り、余分な電力を抑えることを可能にしているという。
加えてEricssonは、4月末に第1四半期の決算で増収増益を発表している。Ekholm氏は、「われわれは長期的視野を持って進めており、研究開発とEricsson自身のデジタルトランスフォーメーションに継続して投資する」と述べている。