本格的なテレワークでは何から手をつければいいのか
事業継続計画(BCP)を意識した中長期的な視点でテレワーク環境整備に着手する際の重点ポイントを解説します。ここでは、緊急時対応を経て本格的なテレワークに踏み切ろうとする中堅企業を想定した導入シナリオをベースに説明してみましょう。
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従業員400人を抱える中堅クラスの製造業。国内に本社を含む3カ所の営業拠点と東南アジアに製造拠点を構えています。感染症の世界的な流行の中、緊急事態宣言の発出や外出自粛の要請を受け、テレワークへの移行を決断しました。
まずは緊急時対応として、企業向けのチャットツール、ウェブ会議システム、リモートデスクトップのアプリケーションを全社に配布し、スタッフの個人所有の端末で利用開始。社内外のコミュニケーションの確保とリモートデスクトップによる社内システムの利用によって必要最低限の業務を維持しました。
業務の停滞を回避できたことを確認し、並行して経営陣と情報システム部による中長期的なテレワーク環境の計画を開始。職種や部署ごとの仕事の進め方を調査し、テレワーク移行時の問題点を洗い出しました。
営業を中心としたフロントオフィスでは、顧客や販売会社といった社外とのコミュニケーション、企画書や提案書の作成、営業日報や顧客情報管理システム(CRM)の入力などの業務を、場所を選ばずに実行できるモビリティ性が求められます。バックオフィスでは、会計ソフトや人事管理システムなどの業務アプリケーションのスムーズな利用、情報量の多いデータを扱いやすい大画面出力など、作業効率に関することが課題となりました。
営業職はこれまでも、社内システムにリモートアクセスして、メールやカレンダー、営業日報、販売管理システムなどを利用してきたため、フロントオフィス業務についてはテレワークに必要な要件がすぐに把握できます。
一方で、バックオフィス業務のテレワーク移行は初めての試みになるため、製品やサービスの選定時にはバックオフィスの仕事に適した機能が網羅されているかどうかを慎重に検討しなければなりません。そこで、製品やサービスの選定時において、主に以下の点について比較検討しました。
- 職種や拠点、言語に依存せずにグローバルの全スタッフが使える
- WindowsやmacOSなど、端末の機種やOSに依存することなく稼働する
- ログイン認証が強固でシンプル
- ネットワークとデータのセキュリティ性が高い
- 機能やアプリケーションの拡張性が高い
- 運用管理が容易
- 初期コスト、運用コスト、拡張コストそれぞれがシンプルで分かりやすい