ミュンヘン市の新たな連立合意で、「Microsoft Office」などのプロプラエタリー製品ではなく、オープンソースソフトウェアを使うべきだと判断されたことで、同市は再び方向転換することになった。
最近行われた選挙の後、緑の党とドイツ社会民主党による連立合意声明の中では、「ミュンヘン市は、技術的、財政的に可能な限り、オープンな標準と無料のオープンソースライセンスのソフトウェアを重視する」とされている。
この合意がまとまったのは現地時間5月10日のことで、両党は2026年までミュンヘン市の与党を務めることになる。両党の合意には、「私たちは『公開なくして公費なし』の原則に従う。これは、秘密情報や個人情報が関係していない限り、ミュンヘン市のソフトウェアのソースコードは今後公開されることを意味している」と述べられている。
この決定は、フリーソフトウェアの支持者たちに熱狂で迎えられた。支持者らは、この選択は経済的にも、政治的にも、行政の透明性の観点からも優れた選択肢だと考えている。
ただし、ドイツで三番目に大きい都市であり、同国でも有数の豊かな都市であるミュンヘン市の新連立政権が下したこの決定の背景には、「Windows NT 4.0」のサポート終了を機に始まった、15年以上にわたる歴史がある。
旧式化したWindowsワークステーションの代わりを見つける必要に迫られたミュンヘン市は、2006年末から、徐々にプロプライエタリソフトウェアから距離を取り始めた。
当時、その移行は、欧州のオープンソースソフトウェア界にとって、パイオニア的で野心的な取り組みだと見なされていた。この取り組みは、オープン標準のフォーマット、ベンダー中立的なソフトウェア、「LiMux」というコードネーム(LinuxとMunich(ミュンヘン)を組み合わせたもの)のLinuxをベースにした独自のデスクトップインフラを必要とした。
計画では、2013年までに市の行政機関が所有するデスクトップの80%がLiMuxに移行することになっていた。ただし実際には、互換性の問題に対処するために、数年間にわたって2系統のシステム(MicrosoftのソフトウェアとLiMux)が併用され続けていた。
ところが、2017年にはLiMuxからMicrosoftのソフトウェアに戻すという判断が下され、物議を醸した。当時この決定を批判した人々は、市長と副市長を非難し、ドイツ本社をミュンヘンに移すというMicrosoftの決定に疑いの目を向けた。