パナソニック、旧JDAソフトに資本参加--AIによる自律型サプライチェーンを推進

大河原克行

2020-05-21 06:00

 パナソニック コネクティッドソリューションズ(パナソニックCNS)社は5月20日、世界最大のサプライチェーンソフトウェア専門企業のBlue Yonderに対して20%出資すると発表した。投資額は8億ドルで、パナソニックはBlue Yonderの取締役会9議席のうち1議席を得る。

資本参加の狙い(パナソニック資料より)
資本参加の狙い(パナソニック資料より)

 同日夕方に記者会見したパナソニックCNS社の原田秀昭上席副社長は、「Blue Yonderが提供するワールドクラスのサプライチェーンソフトウェアソリューションとリカーリング型事業モデル、AI(人工知能)および機械学習に関して理解を深めることができるようになる。パナソニックの変革を加速し、組織能力を高めるのが狙いになる。オートノマス(自律的な)サプライチェーンの実現を加速できる」と語った。同時に、日本の顧客のサプライチェーンプロセスの改革に貢献するとともに、リカーリング型のソフトウェアサービス事業基盤を構築する。現場プロセスを革新するグローバルリーディングプロバイダーを目指すことになるという。

 Blue Yonderは、2020年2月にJDA Softwareから社名を変更した。旧JDAは、1985年の設立以来、35年間にわたってサプライチェーンに特化したビジネスを推進してきた。買収や統合によって小売業向けのサプライチェーンソリューションの強化に加え、製造、物流分野向けにも事業範囲を広げてきた。2018年には、ドイツのBlue Yonderを買収し、現在はAIおよび機械学習を組み合わせたエンドツーエンドのサプライチェーンソリューションを提供している。

「Luminate」ソリューションの概要(同)
「Luminate」ソリューションの概要(同)

 JDAから買収した「Blue Yonder」への社名変更は、「AIおよび機械学習エンジンを最大限に活用することを意図したもの」(同社)とし、主力製品の「Luminate」ソリューションは、AIおよび機械学習を使った全体最適化プラットフォームとなるという。現在では76カ国において3300社への導入実績を持つという。製造業ではトップ100社のうち70社、流通業ではトップ100社のうち73社、物流業ではトップ10社のうち8社に導入されている。

 一方でパナソニックは、2019年4月に日本市場における協業のために、合弁会社の設立を発表。2019年11月29日に、JDAソフトウェア・ジャパン(現ブルーヨンダー・ジャパン)が51%、パナソニックが49%を出資して、現Blue Yonder パナソニックビジネスソリューションズを設立した。工場や倉庫、流通業向けに共同開発したソリューションを日本市場で販売してきた経緯がある。具体的には、パナソニックのプロジェクターを活用した倉庫の仕分けシステムなど4つのソリューションを開発。現在は国内企業と商談を進めている段階にある。

パナソニック コネクティッドソリューションズ社の原田秀昭上席副社長
パナソニック コネクティッドソリューションズ社の原田秀昭上席副社長

 会見で原田氏は、「今回の出資によって日本のみならずグローバルを対象にして(ソリューションを)共同開発をしていくことになる。また、海外ビジネスも勉強していくことになる」と前置きし、「パナソニックCNS社では、リカーリングビジネスの加速を目指し、ハードウェアの強みに、コンサルテーションを含めたソフトウェアビジネスケーパビリティーを掛け算することで、顧客に貢献する体制を作る」と説明した。

 さらに、「Blue Yonderでは、売り上げの約60%をリカーリングビジネスが占める。今回の出資を通じて、サブスクリプション、リカーリング、コンルティングというパナソニックが持たない手法を学ぶことは大きい。それにより、組織能力を強化することがビシネスの拡大につながる」と発言した。また、「パナソニックは、ハードウェアの強みを生かし、モノが動く現場である『地上』が得意分野。それに対して、Blue Yonderはコントロールレイヤー、ソフトウェアケーパビリティーの『低空』が強みで、同時にAIや機械学習で最適化していく『上空』でも力を発揮する。両社によって、地上、低空、上空がつながることになる。ここに大きな意義がある」と述べた。

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