本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBM取締役専務執行役員の三澤智光氏と、富士通フロンテック代表取締役社長の川上博矛氏の発言を紹介する。
「ブロックチェーンのベンダーとしてわれわれは明らかにトップだ」
(日本IBM取締役専務執行役員の三澤智光氏)
日本IBM取締役専務執行役員の三澤智光氏(2019年11月27日会見で撮影)
日本IBMは先頃、ブロックチェーンに関する事業戦略についてオンラインで記者説明会を開いた。同社取締役専務執行役員で事業開発&テクニカル・エキスパート本部を担う三澤氏の冒頭の発言は、その会見の質疑応答で、IBMにとってのブロックチェーンのビジネスインパクトを聞いた筆者の質問に対し、一歩踏み込んで競合との比較を明快に述べたものである。
三澤氏は会見で、IBMブロックチェーンソリューションの最新動向として、「ブロックチェーンサービスのコンテナー化とOpenShift対応によるハイブリッドクラウド戦略の加速」「ブロックチェーンソリューションがSaaSまで拡大」「ポストコロナにおけるブロックチェーンの役割拡大」の3つを挙げた。それぞれの内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言をめぐる質疑応答のやりとりを記しておきたい。(図参照)
IBMブロックチェーンソリューションの最新動向(出典:日本IBMの資料)
会見の質疑応答で、筆者は「ブロックチェーン事業はIBMとしてどれくらいの規模になると考えているか。ブロックチェーンはIBMのビジネスにとってどれほどのインパクトがあると見ているのか」と質問した。2つの質問のようで、実は同じことを聞いている。なぜか。三澤氏の次の返答を聞いてもらえばお分かりいただけるだろう。
「どれくらいの事業規模を想定しているかは公開できないが、IBMとしてはブロックチェーンというテクノロジーを活用した新しいサービスの開発が非常に重要だと捉えており、さまざまな企業とパートナーシップを組んで幅広い業界に向けてソリューションを展開していきたいと考えている。ブロックチェーンそのものはテクノロジーだが、それを活用して生み出すサービスには大きなポテンシャルがあると見ており、IBMにとってこの分野は今後、非常に重要なビジネスになるとともに、大きなインパクトがあると認識している」
三澤氏の返答で、事業規模の具体的な数字が聞けるとはハナから思っていなかった。そこでまず具体的な数字を聞いておいて、「どれほどのインパクトがあると見ているのか」と続けると、答える側としては、数字は言えないが、インパクトの大きさが伝わるように答えたいという姿勢になるものだ。ちょっとした質疑応答の駆け引きだが、三澤氏は上記の返答に続けて、冒頭のように「明らかにトップだ」と明言した。
競合との比較まで問いかけてはいないが、そこは経営に携わる立場ならではの意気込みを示すタイミングだ。三澤氏は明らかにリップサービスをしてくれた。従って、筆者もその意を受けて記事にさせてもらった次第である。