ユナイテッドアローズは、2020年1月にカスタマーサービスデスクを刷新し、クラウド型コンタクトセンターシステムを導入した。4月には店舗とサービスデスクの情報を連携する仕組みを追加実装した。
新たなシステムは、セールスフォース・ドットコムが提供するカスタマーサービス基盤「Salesforce Service Cloud」と、アマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供するクラウドコンタクトセンターサービス「Amazon Connect」を活用したもの。同システムの構想を提案したSCSKが構築を担当した。
新システム概要イメージ(出典:SCSK)
従来のシステムでは、コンタクトセンターアプリケーションと音声基盤の構築・保守ベンダーがそれぞれに存在し、問題が発生時の切り分けや解決に時間を要していた。また、機能を拡張するには各ベンダーとの調整が必要になり、膨大な時間とコストが発生する可能性もあった。さらに顧客対応履歴は業務を支える顧客対応システムで保持しているが、契約内容や取引履歴などの情報は別のシステムで管理されているため「情報の分散」による運用負荷が発生していた。
こうした課題を解決するため、新たなシステムでは「顧客からの問い合わせ」「顧客ごとのカスタマーケア」「場所を問わず顧客をサポート」など、さまざまな機能を集約し、より迅速にスマートなコールセンターサービスを利用することで、生産性を高める仕組みを取り入れるべく、ソリューションを選定した。具体的には、チャネル追加やシステム改修が容易で、OS環境やインフラなどに依存しないシステムが求められた。ベンダーに対しては、システム開発・保守を一元管理できることが求められた。
こうした要件を満たすシステムとして、フルクラウドでのコンタクトセンターシステムを提案したSCSKが評価され、採用に至った。
問い合わせ管理はSalesforce Service Cloudで行う。同プラットフォームは、問い合わせ管理だけでなく、メール、ウェブ、チャット、マーケティングなど複数チャネルの連携を標準機能として有しており、ユナイテッドアローズの成長・事業方針に合わせて機能拡張することができる。新システムでは、ノンカスタマイズで要件を実現することを重要視し、保守性や製品の拡張性を高めるだけでなく、導入コスト・期間の削減にも成功した。また情報の一元管理を行う最初のステップとして、店舗とカスタマーサービスデスク間でそれぞれ管理していた顧客アプローチにおける分析管理を、起票ルールをはじめとした運用方針の策定とともにシステムへ反映、スピード感ある実装を実現した。
音声基盤はAmazon Connectが担う。同サービスを採用することで、数カ月かかっていた初期構築や、その後のメンテナンスも数ステップのセルフサービスで行うことができる。災害時には遠隔地からコールフローの変更を行うこともでき、入電状況で適切な分配が可能であるため、BCP(事業継続計画)の一環としても効果が期待できる。
新システムには、Salesforce Service CloudやAmazon Connectなど、複数のクラウド型ソリューションを統合して提供するとともに保守窓口を一本化するSCSKのAMO(Application Management Outsourcing)サービスが組み込まれている。
AMOサービスの概要
AMOサービスは、インフラからアプリケーションまでをワンストップでサポートし、保守業務の効率化と保守固定費の削減に寄与する。「コンタクトセンターアプリケーションと音声基盤で問題が発生した場合のベンダー各社への切り分け・問題解決の長期化、煩雑化」「機能拡張時に発生するベンダー各社との調整時間・コスト増大」といった旧システムでの課題も、このサービスを利用することで解決され、ユナイテッドアローズの保守業務効率化に貢献している。