この他にもテレワーク申請が煩雑、マネージャーがテレワークに慣れていないといった意見も見られた。SAPジャパンは物理的障害を除去するため、前述した経費精算制度の変更に加えて、テレワークの申請簡素化や利用できる期間の制限を廃止。押印やITサポートをオンラインに移行させている。また、安心感を醸成するため、オンラインコミュニケーションのマナーを啓発し、調査結果を共有することで心理的なつながりを生み出した。
SAPジャパンの2回目の調査では心理的充足に焦点を当てている。3月上旬の1回目も同様に現在の心理状態を調査しているが、結果を見ると全体的に低下傾向にあった。
さらに単語の抽出と感情を掛け合わせたテキストエモーション分析を行うと、トップに来たのは“ビジネス”。「これはわれわれの売り上げは大丈夫だろうかという意味」(鎌田氏)
続く“働くファシリティ”は在宅勤務時に使用する椅子の座り心地がよくない、といった設備面の問題が浮き彫りになった。興味深いのは精神的充足に対する従業員のコメントだ。
満足している従業員は「規則正しい生活のリズムを心掛ける」「出勤と同じ朝のルーティンを実施」といった意見が並ぶ。一方で不安に感じている従業員は「長時間労働しがち。営業時間外はミーティングやメールを禁止にしてほしい」「オンラインのせいか、皆の態度がキツく感じられ恐怖を覚えることがある」といった声が聞かれた。
SAPジャパンは安心感を醸成するため、4月20日、5月12日、5月29日と3回のオンライン全社会議を開催して、ビジネス状況や社内外の取り組みを共有し、全社会議で取り上げきれなかった質問は社内サイトで回答している。
また、人事関連では日々募るストレスに対応するため、ストレスマネジメントセッションを開催するとともに、人事部にメールするのははばかれるものの、現状困っている従業員向けにHRラウンジを開設している。この他にもブロードバンド導入費用補助制度やオフィスの設備を貸与する仕組みも導入している。鎌田氏は新型コロナウイルス危機下において「社員のエンゲージメントを保つには『物理的安全』『会社への信頼』『コミュニケーション』が重要」と説明した。