このようにして実現したリモートワーク移行だが、3ヵ月を経過して見えてきた今後の課題として、まず、ネットワーク負荷増大への対応を來島氏は挙げる。リモートワーク勤務者の増加により、ネットワーク回線が徐々に逼迫。ウェブ会議が開催されがちな朝や夕方にはトラフィックが増加し、業務に支障が生じる可能性もあることから、社内ポータルサイトで注意喚起をするとともに、Office 365やウェブ会議などのOA系と営業系の通信を別というように通信経路の変更で対応しているという。将来的には回線の増強も予定していると來島氏は付け加える。
また、リモートワーク環境のさらなる整備ということで、急きょ準備したリモートワーク用PCを本来の使用目的である店舗の営業担当者用に戻すことや、感染症拡大の第2波などを踏まえた今後のBCP対策として、さらなるテレワーク環境を整備する必要性も來島氏は挙げる。具体的には、本部社員用ノートPCをリモートワーク対応にすることに加え、WVDなどDaaSを利用したBYOD環境の検討や検証があるという。また、対面での営業や訪問が難しくなるなかで、非対面での接客や営業の仕組みを検討する必要もあると同氏は述べた。
新常態のフェーズの事例として紹介されたTelexistence(港区)は、小売向けクラウドロボティクスサービスを展開している。日本マイクロソフトでは、社会課題解決スタートアップ支援プログラム「The Connect」に取り組んでおり、2020年内に100社を目標とし、大企業とスタートアップ企業のマッチングを強化している。現在、47社のスタートアップ企業が参画しているという。

富岡仁氏
その1社であるTelexistenceは、「ロボットを変え、構造を変え、世界を変えるをミッションとし、遠隔操作・人工知能ロボットの開発及びそれらの技術を活用した事業を展開するロボティクス企業」であり、「人がインターネットとロボットを通じて、場所に制約されず、労働参画するという“拡張労働基盤(Augmented Workforce Platform:AWP)”の構築に取り組んでいる」と代表取締役兼最高経営責任者の富岡仁氏は説明する。
同社は現在、小売店舗内で商品の陳列に利用される遠隔操作ロボットを開発しており、それにより、従業員は自宅にネット環境さえあれば地理的な制約を受けずに働くことが可能なるとともに、小売店側も店舗が立地している周辺地域のみならず日本中どこからでも人材採用が可能なり、人件費の低減につなげることになるという。
契約している大手小売りの店舗にロボットを7月以降に導入し、203形状、約2200種類の商品(コンビニエンスストアで販売されている商品の約半数)を遠隔で陳列できるようにすることが予定されていると富岡氏は述べる。
移行支援の継続と拡大
このように、3つのフェーズで各企業は取り組みを進めているが、日本マイクロソフトでは、「さまざまなフェーズにある顧客の支援をしっかりとしていきたい」(三上氏)と考えているという。
同社では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って支援を各種提供してきたが、それを継続しつつもさらに拡大する考えだという。たとえば、コミュニケーション環境支援においては、Teams無償トライアル、利用ガイドやトレーニングビデオの提供に加えて、無償オンラインワークショップの提供範囲を拡大するという。

デスクトップ環境支援としては、WVD導入支援の期間を延長(6月末で終了のところを7月以降も提供)するとともに、「Windows 10 E3」6カ月無償トライアル、セキュリティ診断サービスの拡大も実施する。
社員の意識、組織の風土、制度改革の支援としては、「中小企業のテレワーク応援プロジェクト」を6月1日から開始している。これは、リモートワークを実施しなければいけないと分かっていてもできていない25人以下の中小企業を対象としている。さらに、テレワークを進めていくためのすテップバイステップのガイドも提供する。
また、ソリューションを超えたテクノロジ活用支援としては、X(クロス)インテリジェンス・センターで「よろず相談所」を開設していると三上氏は述べた。