新型コロナウイルス感染症の影響で企業のIT投資が抑制され、設備投資や購買計画の見直しが余儀なくされている。一方で、リモートワークを可能にするためのIT環境の構築や、コロナ後を見据えたデジタル変革(DX)への取り組みを止めるわけにもいかない。
4月にApptio日本法人の代表取締役社長に就任した成塚歩氏。取材はオンラインで行った
多くの経営者にとってIT施策による企業の成長は優先課題となっているにもかかわらず、ITコストの可視化が不十分な状態にあるという。会計システムに入っている情報だけでは正確なコストを把握することができず、また最近では事業部で利用しているSaaSなどのITコストも状況を複雑にしている。パブリッククラウドの予算をすぐに使い切ってしまったり、新たな施策に対して自由に使える資金を迅速に調達できなかったりという問題もある。
こう語るのは、IT投資の分析、計画、最適化を一元管理するSaaSを展開するApptioの日本法人で代表取締役社長を務める成塚歩氏だ。Apptioは2007年に創業した米国企業で、オンプレミスやクラウドなどにあるITシステムの財務データと運用データを、機械学習技術を用いて単一のプラットフォームに統合し、ITの効率化とコストの最適化を進めるTechnology Business Management(TBM)サービスを展開する。4月に日本法人が開設された。
成塚氏は現在の企業のIT投資管理について「IT予算計画には多くの時間を必要とし、予実管理は頻度が少なく粒度も荒い」と指摘する。その結果として「IT組織の多くは自分たちのIT予算の11~15%を不要不急の予算として見積もっている」(同氏)。また、44%のIT組織では資金不足が目情達成の最大の障害になっているという。
これに対し、Apptioは「IT Financial Management Foundation」「Cloudability」「Hybrid Business Management」「Cost Transparency」「Bill of IT」「Agile Investment Management」「IT Benchmarking」「IT Planning Foundation」「SaaS Insights」「Vendor Insights」という製品群を提供する。
Apptioの仕組み
中核製品となるIT Financial Management Foundationは、IT関連の予算計画と予実管理を支援するソフトウェアになる。ITコストの分類と可視化、コスト最適化機会の提示、IT予算計画の高度化を可能にする。
総勘定元帳の実際のコストをIT関連のカテゴリーに変換し、業界標準モデルに沿ってデータを分類する仕組みになっている。労務、ベンダー、資産、プロジェクトなど特定の支出分野について知見を得ることで、コスト削減の機会を作り出す。予算オーナーが自分でデータを分析して予算と実績の差異を見直すことも可能だ。
企業システムのクラウド移行が進む中、クラウドで発生するコストとリソースの最適化が大きな課題になってきている。Cloubabilityは「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」(GCP)をまたがったマルチクラウドの配備と支出の管理をサポートするソフトウェア。2019年6月に買収して、製品群に統合されたものになる。
複数のクラウド基盤で日々発生するコストや利用を包括的に把握することで、アプリケーションのコストを事業部門ごとに割り当てたり、ユーザーが各自のITコストを直接確認できたりできるようになるという。
成塚氏は、Apptioを通じてIT運用(Operation)に財務(Finance)の意識を持たせた「FinOps」を日本で定着させたいと強調した。
Apptioの導入で得られるメリット