海外コメンタリー

"AI未来学者"が求められる理由--人工知能が経営に参画する時代は来るか

Brian Solis (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-06-12 06:30

 企業は、新型コロナウイルスによる混乱を受けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する投資やロードマップを再検討することを強いられている。最近では、重要性が低いプロジェクトが後回しにされる一方、人工知能(AI)や自動化に関するプロジェクトに多くの注目が集まっている。この60日間だけを見ても、企業は驚くほどの切迫感を持って、広範囲にさまざまなレベルのAIを導入してきた。

 AIが今後大きな影響を与えると考えられる領域の1つが(あまり表だって議論されてはいないが)、パンデミックによる混乱で新たに得られた大量の新しいデータを使った、未来のモデル化だ。今後36カ月間で姿を現してくるであろう「Novel Economy(新たなエコノミー)」に企業が対応していくためには、AIを自動化だけに使うのではなく、「AI未来学者(AI Futurist)」をバーチャルな戦略アドバイザーとして経営陣に加えることが望ましい。ルールブックもなく、専門家もおらず、ベストプラクティスも存在しないこの時代こそ、AIが輝く時かもしれない。

AIは企業の必須アイテム

 企業はほとんど一夜にして、全力でDXに取り組み、従来のアナログ中心のモデルから、デジタルネイティブなシステム、ワークフロー、業務プロセスへの転換を推進せざるを得ない状況に追い込まれた。しかし多くの企業には、そのような破壊的な変革を素速く推進できるだけの備えはなかった。利害関係者は、喫緊の課題や混乱するプラットフォームへの対応に集中せざるを得なかった。

 クラウドやサイバーセキュリティへの投資に加え、さまざまな形態の人工知能の導入に関する投資が大幅に増えている。Forrester Researchは、新型コロナウイルスの危機を経験したことで、企業の経営陣にとって自動化は必要不可欠なものになっており、企業の自動化は今後ますます加速していくと予想している。AIを利用したアプリケーションへの投資は、将来の破壊的改革に耐え、全体的な競争力を向上させるための、高度な取り組みへの道を開く。

 AIと機械学習と自動化は(それぞれあり方は違っているものの)、さまざまな重要領域の需要に対する対応能力を拡大するための変革を、人間には不可能な形で加速している。例えば、反復的な業務ワークフローの自動化、デジタル的なサービスチャネルを通じた顧客とのやりとりの増加への対応、重要な事業領域における人間の意思決定を支援するためのデータの整理や解釈、進化する顧客の行動パターンを分析し、顧客エンゲージメントやeコマースの新たなスタンダードに合わせて最適化していくことなどがそれにあたる。

 AIの導入は、製造、流通、価格設定・在庫管理、サプライチェーンなどの領域でも加速している。AIは、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)や、会話型AI、リアルタイムアナリティクスや予測分析、深層学習によるブラックボックスモデルやホワイトボックスモデルの構築などのさまざまな形で、事業の継続性の確保や、破壊的な改革に対する安定性の向上、業務プロセスや業務フロー、パフォーマンスの最適化、需要や市場機会の正確な予測に役立っている。それに加えAIは、企業が抱えているリスクを緩和し、事業のレジリエンスを高めることができる。不確実性に満ちた今の世界で、単に事業を継続するだけでなく、生き残って繁栄していくためには、AIの力が必要だ。

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