ローカル5Gのメリット
では、ローカル5Gを使うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。自営で設置でき、現在無線通信でよく使われているWi-Fiと比較してみましょう。
ローカル5Gは、Wi-Fiのように自営設備として利用するため、通常の5Gと異なり通信料金が発生しません。加えて、Wi-Fiの「通信料が発生しない」というメリットはありつつ、機器の認証には携帯電話のようにSIMを使うため、認証面でのセキュリティも担保できると考えられます。
また、ローカル5Gは通常の5Gと異なり、外部のネットワークから切り離されます。デメリットであった「長い距離を飛ばず、障害物の回り込みも弱い」という特性も敷地、建物外への電波漏洩を防ぐことができる、というメリットに変わり、セキュリティを重視した企業や自治体などにもニーズがあると考えられます。

Wi-Fiとローカル5Gの比較(出典:NTTデータ先端技術)
ローカル5Gの用途
通信障害の影響を受けづらいことから、ローカル5Gの代表的な用途に産業分野向けIoT(Internet of Things)が挙げられます。
工場施設内や敷地内にローカル5Gを構築すれば、カメラを取り付けた多数の生産ロボットを自動制御可能になります。例えば、人の目に頼らざるを得なかった細かな検品作業の自動化、といった応用例も考えられます。
キャリアの提供する5G回線を利用した場合、他の利用者の利用状況などから特定の時間帯で影響を受けたり、他エリアの障害の影響を受けたりする可能性もありえます。しかしローカル5Gの場合、独立したネットワークのため周囲の環境からの影響を抑制でき、仮に不具合が出たとしても、自分たちで修理可能です。ただし、裏を返せば自分たちでメンテナンスできる体制を整える必要があります。
さて今回は、5Gの特徴、なぜローカル5Gが注目されているのか、産業分野向けIoTに利用される、といった点について解説しました。次回は、利用するにあたって押さえるべきセキュリティについて解説します。
(第2回は6月下旬にて掲載予定)

- 佐藤 雄一(さとう ゆういち)
- NTTデータ先端技術 セキュリティ事業本部
- セキュリティコンサルティング事業部
- コンサルティングサービス担当 チーフコンサルタント
- 2010年に博士号を取得、同年4月 NTTデータ先端技術に入社。 Oracleデータベースを中心として、データベースやサーバー導入に従事。 2017年からセキュリティコンサルティングを担当し、セキュリティ対策の整備運用支援、監査などを行っている。CISSP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル)、CISA(公認情報システム監査人)、CISM(公認情報セキュリティマネージャー)などの資格を持つ。 2019年、IPA 情報処理技術者試験委員 就任。