IDC Japanは6月16日、国内の企業向けITインフラ(サーバー、ストレージ)について、システムタイプ別の市場規模とベンダーシェアを発表した。2019年の市場規模は前年比4.1%増の7129億8800万円だった。
ベンダーシェアでは、富士通が22.3%(前年比6.5%増)で1位になった。NEC、日本ヒューレット・パッカード(HPE)、デル、日立製作所、IBMがそれに続いた。上位ベンダー6社のうち、前年比でプラス成長だったのは、富士通、NEC、デル、日立製作所、IBMの5社。NEC、日立製作所、IBMの3社は前年比で2桁増だった。
同市場をシステム種別で見ると、SoR(System of Record)が全体の40.2%、SoE/SoI(System of Engagement/System of Insight)が12.7%、Otherが47.1%を占めた。SoRが前年比3.4%増の2868億7600万円、SoE/SoIが同78%増の903億2000万円、Otherが同3.7%増の3357億9200万円だった。
IDCでは、同市場で成長余力が相対的に高いのはSoE/SoIと指摘した。その背景として、DX(デジタル変革)関連の新規需要が厚みを増している点が挙げられている。人工知能(AI)や機械学習(ML)、深層学習(DL)に関連した需要が特に高いと同社は見ている。
配備モデルで見ると、パブリッククラウドが前年比3.5%減の1276億6400万円、プライベートクラウドが同22.3%増の641億5100万円、トラディショナル(非クラウド)が同4.2%増の5211億7300万円だった。
パブリッククラウドのマイナス成長は、国内における主要グローバルサービスベンダーの投資が一段落したことによるものという。プライベートクラウドの2桁成長は、先行してパブリッククラウドを活用してきた企業の一部がTCO(総所得コスト)の削減やセキュリティ強化などの理由で、パブリッククラウドからプライベートクラウドへ移行する動きがあるとIDCでは見ている。トラディショナルは、メインフレームの更新需要に加えて、Windows Server 2008のサポート終了に伴う需要増といった一過性の要因で好調だった。
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャのグループマネージャーである福冨里志氏は「2019年の国内エンタープライズインフラ市場はプラス成長を達成した。しかし、2020年に入ってからの新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行によって、多くの企業や組織におけるIT投資余力の低下やトラディショナルからクラウドへのシフトの加速が見込まれる。また、国内では政府におけるクラウドバイデフォルトの影響が官公庁/自治体向けビジネスで今後は徐々に現れる。これらの変化を踏まえた適切な戦略と実効性のある戦略遂行上の仕組み作りが求められる」と述べている。