日本マイクロソフトは6月17日、開発者向け年次イベント「de:code 2020」をオンラインで開催した。「Power of Tech Intensity」をテーマに掲げた基調講演では、開発者やITプロフェッショナルを対象に、最新技術を披露した。
最初に登壇した執行役員 最高技術責任者の榊原彰氏は、「人々の行動変容を前提とする社会のスマート化」がニューノーマル(新常態)時代に欠かせないと指摘した。その一例として行動変容をうながすため、日本の有志エンジニアが開発したアプリケーション「COVID-19 Radar」、情報共有や発信を行うコミュニティ「コロナ対策エンジニア」などの事例を引用、社会変革を目指すためには開発者やITプロフェッショナルの"情熱"が欠かせないことを強調した。
日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 兼 マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役社長の榊原彰氏
Teams需要を支えるAzure PaaSの新ソリューション
新型コロナウイルスの影響でMicrosoft Teams利用者数は1日当たり7500万人を突破し、会議時間に換算すると41億分になるという同社。クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部 シニアプロダクトマネージャーの廣瀬一海氏は、「Microsoft Teamsを支えているのがMicrosoft Azureのマネージドサービスとして提供しているPaaS群」と紹介する。
廣瀬氏は、5月にグローバルで開催の「Build 2020」でプレビューもしくは一般提供を開始した機能群を次々と披露した。ウェブページをアプリケーションのように動作させる「SPA(Single Page Application)」や、ウェブページをアプリケーション化する「PWA(Progressive Web Apps)」の開発を容易にする「Azure Static Web Apps」のプレビュー版、ウェブブラウザー上で.NETアセンブリをネイティブに実行する「Blazor WebAsembly」、OLTP(オンライントランザクション処理)とOLAP(オンライン分析処理)間で必要だったETLツールを用いずに大規模な分析を実行する「Azure Synapse Link for Azure Cosmos DB」のプレビュー版を見せた。
日本マイクロソフト クラウドネイティブ&デベロッパーマーケティング部 シニアプロダクトマネージャーの廣瀬一海氏
新たな社会規範として、人と人が一定の距離を取るソーシャルディスタンスの日常化を踏まえると、リモート開発の環境が重要になってくる。COVID-19 Radarの開発に個人として参加したという廣瀬氏は、「新型コロナウイルスのケースに基づくと、リモート開発しなければならない場面は増えていく」と指摘し、リモート開発の課題を連ねた。
日本マイクロソフトによれば、運用・開発を自動化する仕組みを持たない企業の割合は90%に上り、集約型から分散型に移行した開発チームのバグ増加率は50%に高まっている。これらリモート開発環境を一助となるツールとして同社は「Visual Studio Code(VSC)」を推奨する。
VSCは、開発者が導入した拡張機能や、カスタマイズしたキーボードショートカットの同期機能を備えているため、どの端末でも変わらない操作性を実現できる。その他にもVisual Studio Live Shareによる音声通話やチャットでペアプログラミングを実現する「Visual Studio 2019」、チーム全体の作業を計画・追跡・検討を可能にする「Azure Boards」、開発環境を短時間で展開できる「GitHub Codespaces」、スマートフォン用ゲーム「Minecraft Earth」を実現する上で欠かせない「Azure Mixed Reality Services」に含まれる「Azure Remote Rendering(Azure上で3Dモデルなどをレンダリングする)」や「Azure Spatial Anchors(3Dコンテンツに実際の尺度でいかりを打つ)」などが紹介された。