再定義されるオフィス--在宅勤務を経験してみえてきた“働く場所”のこれから - (page 3)

尾羽沢功 (シトリックス・システムズ・ジャパン)

2020-06-23 06:30

 このような時こそ、リーダーシップが必要であり、社員に共感してもらう取り組みが必要になってきます。特に、テレワークを続けたい理由も育児や介護だけなく、生産性の確保など多様になり、また、頻度や場所も異なり、それぞれのニーズに合わせた働き方も様々です。

 リーダーは、会社の存在意義、進む方向性をより言語化して、それを社員に腹落ちさせることがさらに求められます。そういうリーダーがいない会社は、これから厳しい現実が待っているはずです。

 全員がテレワークを実施した今、「オフィスに行きたい」「テレワークを続けたい」という各従業員の意思は強くなっているかもしれません。だからこそ、次のステージに進むためには、従業員に共感できるリーダーシップが必要になります。

 「経理業務だから出社すべき」「営業だから出社する必要がない」など業種で働く場所を指定することは、従業員エンゲージメントを下げる可能性があります。テレワークでも完結する業務でも、あえて出社してもらう機会をつくり、オフィスでなければ仕事ができないという固定概念のある業務をあえて在宅勤務にするなど、さまざまな試行錯誤を通して従業員を理解し、従業員に理解してもらい、従業員が理解しあえる職場を作れるリーダーシップが必要になるのです。

 また、在宅勤務を現実的なものとして定着させるには、在宅勤務は非常時の対処法とは違うということを理解し、制度化させる必要があります。緊急事態であったからこそ、急ごしらえでリビングにワークスペースを作り、子どもやペットも映り込むウェブ会議をこなしてきましたが、今後は自宅に環境が整っていないという理由から若手社員のカフェ勤務などによる情報漏洩の危険性もあります。

 在宅勤務を中心に考える場合、労働時間中の子どもの保育場所や静かに安心して仕事に集中できるシェアオフィスの提供や環境の整備、従業員の健康管理を含めて労働時間の管理など、人事制度として再構築することが求められます。一方、従業員もより一層のタイムマネジメントスキルが生まれオンとオフの境を自分で引き、パフォーマンスを最大化する必要となります。

 従業員エンゲージメントと満足度を高め、離職の可能性を低下させるといわれているテレワーク。「働く場所=オフィス」は過去の話となり、企業と従業員はそれぞれの“ワークスペース”の再構築が必要になるのではないでしょうか? この動きを一時的なものとしてではなく、企業の長期的戦略としてバランスよく捉えることで、今後の競争力につながることは明確です。

尾羽沢功(おばざわ・いさお)
シトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長
1982年に高見澤電機製作所(現・富士通コンポーネント)に営業職として入社、富士通による買収後は富士通コンポーネントのドイツ支社長として赴任。日本ルーセントテクノロジー(現・ノキアソリューションズ&ネットワーク)と日本アバイアで取締役 営業本部長職、2005年からSAS Institute Japanで執行役員営業統括本部長、2013年からインフォアジャパン代表取締役社長を歴任。
2019年4月からシトリックス・システムズ・ジャパン代表取締役社長に就任、日本市場での営業やマーケティング、新規事業開発などを統括している

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