インテル、第3世代Xeon SPやFPGA、半導体ストレージなどアピール

渡邉利和

2020-06-24 14:22

 インテルは6月23日、2020年第2四半期の報道機関向け説明会をオンラインで開催した。同社がグローバルで表明した新たな企業理念や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に向けた取り組みを紹介するとともに、最新世代のCPU/FPGAや半導体ストレージなどについて説明した。

 代表取締役社長の鈴木国正氏は、同社がグローバルで表明した新たな“パーパス”(存在目的)についての説明。米国企業では、2019年夏頃から従来の株主至上主義を修正して広く社会全体に価値をもたらすことを企業の使命だと再定義し、存在目的を明確化する動きが見られるようになった。同社でもこの流れを受けて「世界を変革するテクノロジーを生み出すことで地球上のあらゆる人々の生活を豊かにする」を存在目的に定めたと紹介された。

 その上で、ビジョンについては「データの可能性を切り拓く、信頼性とパフォーマンスに優れたリーダー企業を目指す」となっている。また、2030年に向けた目標として「Intel's RISE Strategy」を掲げている。“RISE”は、“Responsible(社会的責任)”“Inclusive(受容性)”“Sustainable(持続可能性)”“Enabling(実現能力)”の頭文字を取ったもの。さらに、新型コロナの世界的な流行に対応した同社の取り組みについても紹介された。

 鈴木氏は続いて、同社が「推し進める方向性」として「データ・セントリック・トランスフォーメーション(DcX)」というコンセプトを示した。デジタルトランスフォーメーション(DX)が、広くデジタル技術の活用をうたうのに対して、同社が提唱するDcXではよりピンポイントで「データ中心」を強調したもの。さらに、同社の製品ポートフォリオを「データ移動の高速化」(ネットワークやコネクティビティー関連)、「より多くのデータを保存」(ストレージ関連)、「あらゆるデータを処理」(プロセッサー関連)の3領域に分類し、これらを「DcXの基盤」として位置付けている。

 執行役員常務 技術本部 本部長の土岐英秋氏は最新世代の製品群を紹介した。大きくは、サーバー/データセンター向け製品として「第3世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー(SP)」「インテルStratix 10 NX FPGA」「インテルOPTANEパーシステント・メモリー200シリーズ」「インテルSSD D7-P5500/5600」、クライアント/PC向け製品として「インテル ハイブリッド・テクノロジー搭載 インテルCoreプロセッサー」が新製品として紹介された。

 まず、第3世代Xeon SPは、2019年にリリースされた第2世代(Cascade Lake/Purley)の製品で、まず4~8ソケット向けの「Cooper Lake(Cedar Island)」が提供開始、1~2ソケット向けの「Ice Lake(Whitley)」は2020年後半に登場予定とされている。さらに、2021年のリリースに向けて次世代の「Sapphire Rapids(Eagle Stream)」が開発中で、現時点で「電源オンまで来た」(土岐氏)という進捗状況も紹介された。

 Xeon SPの各世代では、AI(人工知能)処理向けの機能強化が行われている。第1世代では「FP32」が実装され、第2世代では「INT8」が、そして今回の第3世代ではインテル ディープラーニング・ブーストの強化として「BF16(Bfloat16)」が追加された。トレーニングと推論の両方を高精度で処理できるが演算速度はさほどでもないFP32と、推論処理に特化して高速だが精度が低いINT8の中間と位置付けられ、トレーニング/推論の両方をFP32より高速に処理できる。

 続いて、OPTANEの新世代製品となる「200シリーズ」も近日発売とされた。メモリー帯域幅が平均25%向上し、ソケット辺りの最大容量が4.5TBに増加している。また、SSDストレージデバイス「インテル 3D NAND SSD D7-P5500/P5600」も近日発売予定。

 FPGAでは、「インテルStratix 10 NX FPGA」が同社初のAIに最適化されたFPGAとして紹介された。先行製品であるStratix 10 MX FPGAの「DSPブロック(乗算器×2、アキュムレーター×2)」がAI処理向けの「AI Tensorブロック(乗算器×30、アキュムレーター×30)」に置き換えられ、INT8で最大15倍の演算性能を実現するという。Stratix 10 NX FPGAは2020年後半にシリコン製品をリリースする予定。

 最後に、インテルCoreプロセッサーでは新たに「インテル ハイブリッド・テクノロジー」と「Foveros 3Dスタッキング・テクノロジー」が搭載された点がポイントとなる。

 Foveros 3Dスタッキング・テクノロジーは、プロセッサーダイを上下に積み上げる形で高密度実装する技術で、これまではロジック回路とメモリーの組み合わせでは実現していたものの、ロジックとロジックを三次元に積層するのは初めてだという。主にI/O機能を実装するベースダイとコンピュートダイが組み合わされるが、ベースダイは「低コスト・低リークプロセス」、コンピュートダイは10nmプロセスで、それぞれ製造される。用途に応じて最適なプロセスを使い分けることでコストとパフォーマンスの最適なバランスを実現する狙いだろう。

 また、インテル ハイブリッド・テクノロジーは「フォアグラウンドタスクのための(Core系の)Sunny Coveコア」と「バックグラウンド処理のための(Atomベースの)Tremontコア(×4)」を組み合わせている。演算能力を必要とするワークロードと、負荷はさほどではないが低消費電力で処理したいワークロードをそれぞれ適切なコアで処理することを狙った構成だ。コアの使い分けにはOSのサポートが必要だといい、OSのタスクスケジューラーで「どのプロセスをどのコアで実行するか」の振り分けを行うようだ。

 新型コロナの流行もあって大規模な新製品発表にはならなかったが、一時期の停滞感は払拭されつつあるようで、製品の世代交代のペースが上がってきている印象も受ける。次は、これらの新製品が順調に市場投入されることに期待したい。

新たに公表された同社のパーパス(存在理由)とビジョン。ビジョンよりも上位にパーパスを掲げるのが現在の米国企業の流儀となりつつある。

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