IDC Japanは6月29日、国内5G(第5世代移動体通信システム)のネットワークインフラストラクチャーについて市場予測を発表した。国内で2020年3月に商用サービスが始まった5Gのネットワークインフラストラクチャーへの投資は、2020年以降に急速に拡大するとみている。2020年の市場規模は2080億7900万円と予測し、2019~2024年の年平均成長率(CAGR)は54.6%で推移すると見込んでいる。
同市場を製品別で見ると、RAN(Radio Access Network)が最大の投資先であり、2020年の5G向け全体の約85%を占める。国内5G RAN市場は、2019~2024年に52.6%で成長し2024年には2939億6400万円に達すると予測する。
5Gのトランスポートネットワークには、ルーターを中心とするパケットベースのネットワークが導入され始めている。5Gの真価を発揮するために必要とされるエンドツーエンドネットワークスライシングの実現や、オープンRANアーキテクチャーにおけるフロントホール/ミッドホールの柔軟な構成に適しているためという。それを実現する国内5G向けルーター市場は、2019~2024年のCAGRで43.2%、市場規模は2024年に338億2200万円に達するとみている。
国内MNO(Mobile Network Operator)による5Gサービスの展開計画は、2019年4月に5G周波数が割り当てられた時点と比べて、前倒しの傾向が明らかだという。そうした積極的な姿勢の一方で、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響は、5Gサービス展開の懸念材料になっている。COVID-19の終息時期にもよるが、2020~2021年における5Gサービスの浸透やサービス基盤整備に少なからず影響を与えるとIDCではみている。
5G向けネットワークインフラストラクチャーへの投資拡大で、活況を取り戻しつつある通信事業者向けネットワーク機器市場において、IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャーの草野賢一氏は「通信事業者向けネットワークインフラストラクチャー市場は、通信事業者を頂点とするピラミッド構造から、ソフトウェアベンダーや半導体ベンダー、オープンソースコミュニティーを含むベンダーと通信事業者が、有機的にかつフラットにつながる関係に変化してきている。こうした新たなエコシステムに適応し、関係性を構築できるかどうかが、ネットワーク機器ベンダーとしての競争力の差につながる」と述べている。
国内5Gネットワークインフラストラクチャ市場 支出額予測、2019~2024年(出典:IDCJapan)