プロジェクトを統括し、進行を管理するプロダクトマネージャー(PdM)。コストやスケジュール、人員管理など、調整する場面も多い。さらに、PdMに求められるのが、プロダクトを正しい方向に導くために必要なスキルだ。
「競合サービスがこの機能を入れているので同じ機能を入れる」といった意思決定では、 次第にコスト競争に陥ってコモディティー化し、結果としてチームも疲弊する。経営戦略の知識を身に付け、外部環境や業界状況を分析、理解することでプロダクトが進むべき道を描くことができる。
全3回にわたりビジネスナレッジの動画学習サービス「グロービス学び放題」などを提供するグロービス・デジタル・プラットフォームの開発マネジメント責任者の末永昌也氏が、PdM・エンジニアが今学ぶべきビジネス知識について紹介していく。最後となる今回は、特にPdMを目指すエンジニアに末永氏が贈りたい、ビジネスにおける戦略の考え方がテーマだ。
「戦わずして勝つ」、開発チームにおける戦略の重要性
世の中に出たサービスを模倣してサービスを作っていくことが、ままある。しかし、そうした意思決定の未来は、同じようなサービスや機能が乱立し、結局は資本力を持つプレイヤーの勝利だ。
チームが消耗しないためにも身に付けたいのが、経営戦略の考え方である。「戦略」とは「戦」を「略」すと書く。その名の通り、いかに戦いを省略し、戦わずして勝つかという考えだ。それを実現するには、プロダクトの競争優位を築く必要がある。そこで、コスト低減の5つのメカニズムを押さえておきたい。それは、「規模の経済性」「密度の経済性」「範囲の経済性」「ネットワークの経済性」「習熟効果」ーーである。
そのうちの1つを説明すると、「規模の経済性」は、事業規模を大きくするほど単位当たりのコスト(固定費)が小さくなり、競争上有利になる効果を意味する。ITシステム導入をする時にも、規模を生かせなければ、システム導入のコスト回収ができない。
事業規模を大きくすることでコストは低減する(出典:グロービス学び放題「規模の経済性」)
つまり、注力すべき市場メカニズムを特定し、競合と競争するのではなくコツコツと競争優位を築いていくことで、結果として競合に対して強いポジションをとることができる。まさに「戦わずして勝つ」である。
開発者も、こうした経営戦略を頭の片隅に置いておくことで、チームの疲弊やプロダクトのコモディティー化を未然に防ぐことができる。