マネージャーを目指すエンジニアのためのビジネスナレッジ

「戦わずして勝つ」--プロダクトが進むべき道をどう描くのか - (page 3)

末永昌也 (グロービス)

2020-07-03 06:00

外部へ意識を向けることで、より強いプロダクトを育てる

 自社だけではなく、外部にも目を向けてみたい。外部環境を分析することで、プロダクトを競合に勝てる方向に導く道筋が見えてくる。ここで使いたいのが、業界の収益性に影響を与える要因を分析するフレームワーク「5つの力分析」である。

 それは、「業界内の競合」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」の、業界の収益性に影響を与える5つの力を分析し、その業界がもうかりやすいかを分析するものだ。

 私が所属するグロービスのプロダクトである「グロービス学び放題」の市場を例に取って説明しよう。

 買い手は、十分な量と質のコンテンツがない場合には、われわれのサービスを利用しないかもしれない。また、十分なユーザーが囲めていない場合には、供給者であるコンテンツ提供者を集めることも難しい。

 魅力的なコンテンツが十分に出そろい、コアなファンを獲得できていれば、新規参入も諦めさせることができるだろう。また、代替品にユーザーが離脱しないためのコミュニティーの構築などが施策として考えられる。

 こうして、購入者にとっても、供給者にとっても力関係で優位に立つにはどうすれば良いのか、また、新規参入を諦めさせ、代替品が出た時にもユーザーを確保するためにはどうすれば良いのかを考えることが重要だ。直接の競合と機能ベースで戦うのではなく、シビアに市場と向き合い、自分たちがやるべきことを着実に進めていきたい。「数年後には、その力関係はどうなるか?」など未来にも思いを馳(は)せてみよう。

 ものづくりをしていると自社プロダクトのことを中心に考えがちになってしまうが、市場環境や競合、代替品の脅威を意識しながら開発していくことで、長期的に勝てるプロダクトを作っていくことができる。

 3回にわたって開発者に役立つビジネスナレッジを解説してきた。いかがだっただろうか。エンジニアがビジネスサイドに歩み寄り、経営視点を持つことで、新しい発想や進め方が生まれると思う。経営視点を持ったエンジニアやPdMが増えることで、世の中にイノベーティブなプロダクトやよりよい開発プロセス、エンジニアの地位向上が実現できることを期待している。

執筆:末永 昌也
グロービス VP of Engineering
東京工業大学情報理工学研究科修了。グロービス経営大学院英語MBAコース修了。I&Gパートナーズ(現アトラエ)入社後、Startup Weekendの世界大会入賞をきっかけに、LOUPEを立ち上げCTOに就任。その後、グロービスに1人目のエンジニアとして入社しプロダクト開発・組織開発を行い、現在VP of Engineeringとして開発統括。

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