Twitterで働く黒人プログラマーRegynald Augustin氏の場合、変革への原動力は、2019年に受け取った電子メールの中にあった「automatic slave rekick」という語句によってもたらされた。
カメラのフラッシュにある、マスターとスレーブのモードを切り替えるスイッチ
提供:Stephen Shankland/CNET
「automatic slave rekick」というのは、二次プロセスの再起動に関するエンジニアリング関係の議論の一部にすぎなかったが、それがきっかけとなって、Augustin氏は、人種差別主義とのつながりがある用語のTwitterにおける使用を変えようとし始めた。同氏は、「奴隷」の意味もある用語「slave」を技術的な文脈で目にすることには慣れていた。だが、「『rekick(再起動の意味だが、再び蹴るという意味にもとれる)』という単語を見て、職場でそうなるとはそれまで考えもしなかったほど頭に来た」と同氏は語った。
Augustin氏は、最初は1人で、その後はもう1人のエンジニアKevin Oliver氏と力を合わせて、「master」「slave」「whitelist」「blacklist」といった用語を、米国の歴史や文化の過酷な部分を思い出させない単語に置き換える取り組みの先頭に立った。Augustin氏は、当時の自身の気持ちについて、次のように語った。「こんなことはやめないと。こんなのはよくない。これから変えなくては」
技術用語の変更によって、何世紀にもわたる人種的不平等に終止符が打たれると期待する者はいない。だが、TwitterのAugustin氏やOliver氏をはじめとして、テクノロジー企業には、自分たちの手で実現できそうな変革を強く求めている人たちがいる。そういった変革には、データベースやソフトウェアプロジェクト、カメラのフラッシュ、ハードドライブなどの説明で用いられる「master」や「slave」のような、人種差別的な意味を含んだ技術用語を置き換える取り組みも含まれる。
Twitterのマネージャーは1月に、2人のエンジニアの取り組みを正式に認め、エンジニアリング部門全体で組織的にこの問題に取り組み、性別や年齢、障害の面で差別に結びつく用語(たとえば、「man hours[工数]」や「sanity check[サニティーチェック]」の言い換え)へと取り組みを拡大する仕事にお墨付きを与えた。Oliver氏とAugustin氏は、米CNETとの独占インタビューで取り組みについて詳しく説明した。
「Black Lives Matter」運動で加速
5月、ミネソタ州の黒人男性George Floydさんが警官に膝で首を押さえつけられて死亡した事件を受け、米国で人種差別に抗議する「Black Lives Matter」運動が広がる中、このような取り組みは重要性を増している。
この運動の高まりが、Twitterに用語の変更を促すことになった。「最近起きた全ての出来事をきっかけに、社内でものすごい速さで意識が浸透した」とAugustin氏は語る。
同様の取り組みはMicrosoft傘下のGitHubとLinkedIn、Apple、Googleの「Chromium」開発者の間でも始まっている。その多くは、役職者からではなくボトムアップで生じたものだ。
古い用語を変える
Oliver氏によると、Twitterのエンジニアリングチームは現在、人種や性別、健常性とつながりがある用語の変更に取り組んでいるという。対象となる用語と推奨されるその言い換えは、以下の通りだ。
- 「whitelist」を「allowlist」に
- 「blacklist」を「denylist」に
- 「master/slave」を「leader/follower」「primary/replica」「primary/standby」に
- 「grandfathered」を「legacy status」に
- ジェンダーを特定する用語(「guys」など)を「folks」「people」「you all」「y'all」に
- 同じく「he」「his」などを「they」「their」に
- 「man hours」を「person hours」「engineer hours」に
- 「sanity check」を「quick check」「confidence check」「coherence check」に
- 「dummy value」を「placeholder value」「sample value」に
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。