Googleは、中国のクラウド市場へ参入するために進めていた「Isolated Region」(孤立した地域)プロジェクトを断念した。Bloombergの報道によると、このプロジェクトはその名前が示唆する通り、データを国内で管理したいという国々の要望に応えるために開発していた。Googleはプロジェクト中止の理由を、別のサービスで「より良い成果」を提供できる可能性があるからだとしている。
中国は「万里のファイアウォール」(Great Firewall of China)で、市民に提供されるインターネットリソースやオンラインサービスを検閲することで知られており、現存する国の中では最も監視が厳しい国である。
近年、IaaS(Infrastructure as a Service)をはじめとするクラウド技術が飛躍的に成長している。新型コロナウイルスの世界的な流行によってリモートワークへ移行しているため、さらなる利用の増加が見込まれる。Gartnerは2020年までに、同市場が3312億ドル規模になると予測しているが、この数字は新型コロナの影響によるビジネス動向を考慮したものではない。
ほとんど未開拓である中国市場も例外ではない。しかし、同国は検閲が厳しく、データ主権の立場をとっていることから、受け入れられる製品を作るのは容易ではない。
Bloombergに語った匿名の従業員2人によると、GoogleはIsolated Regionによって、中国でクラウドサービスを確立することを目指していた。具体的には、現地企業や政府機関などのサードパーティーを通じて、Googleの主要なサービスとは切り離して、クラウドサービスを提供する考えだった。
しかし、米国と中国の対立激化に伴い、同社は2019年にプロジェクトを一時停止し、2020年5月にはプロジェクトそのものを放棄した。
従業員2人は、Googleがこの決断に至った理由を、米中間の緊張と新型コロナの感染拡大だと述べているが、同社の広報担当者はこれを否定した。その代わりにIsolated Regionを中止したのは「当社が積極的に追求している他のいくつかのアプローチの方が、より良い成果を提供できるから」だと説明した。詳細については触れなかった。
「当社はデータのガバナンス、運用プラクティス、ソフトウェアの存続性など、これら要件に対応するために、包括的なアプローチを取っている。Isolated Regionはこうした要件に対処するため検討した1つの手段に過ぎない」(Google広報担当者)
Googleが中国市場向けに同社サービスをカスタマイズしようとしたのは、今回が初めてではない。中国の検閲要件に準拠した、Google検索エンジンの別バージョンを提供する「Project Dragonfly」は、広範な批判と従業員からの抗議を集め、プロジェクトは最終的に中止された。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。