本記事は楽天証券が提供する「トウシル」の「TOP 3分でわかる!今日の投資戦略」からの転載です。
今日のポイント
- 素早い損切りを徹底していたのに半値になるまで売れなかった昭文社
- 昭文社は「成長の3条件を満たしている」と思い込んだ
- 昭文社は電子地図ビジネスで稼ぐことができなかった
- ずるずる下げる小型株はどんな事情があろうといったん「売り」
- これだけは絶対やってはいけない:急落銘柄の買い増し
これら5点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
素早い損切りを徹底していたのに半値になるまで売れなかった昭文社
このコラムではときどき、筆者が25年間、日本株のファンドマネージャーをやってきた経験から、個人投資家の皆さんに役立つと思う話を選んで紹介している。今回は筆者が成長株投資で大失敗した話を紹介する。
こうしたコラムでよく大成功した話を紹介する人がいる。筆者もいろいろうまく売買した話をしたくなることもある。ただし本当に役に立つのは、大成功した話より大失敗した話だと思う。大失敗をなくすことが長期的な資産形成に重要だからである。なぜ失敗したか、実例を知ることが役立つはずだ。
筆者は、20代から始めて50代になるまで1000億円以上の日本株ファンドを運用していた。大型の割安株を中心にポートフォリオを組みながら小型成長株に分散投資していた。
大型割安株では、堅実経営で安定的に高収益を上げているにもかかわらず不人気で、株価が割安になっている銘柄を選んで投資していた。じっくり長期投資して投資価値が見直されるのを待つ戦略である。
一方、小型成長株では投資テーマに乗り、短期的な株価上昇が期待できる銘柄を選んでいた。小型成長株は値動きが荒いので、失敗したら早めの損切りを徹底していた。保有している小型成長株が突然急落するときは、理由を考える前に問答無用の売りを出していた。理由は後から分かることが多く、分かってから売っていたのでは遅すぎるからである。
素早く損切りすることに自信があったので、勢いよく上がっていく成長株に飛び乗ることもできた。高値づかみと気づいたら素早く売ることを徹底していたことが、長期的な好パフォーマンスを維持するために重要だった。従って、投資した小型株が半値になるまで持ち続けることはほぼあり得なかった。
ところが、そんな筆者が小型成長株で大失敗したことがある。それは、2000年に投資した昭文社HD(9475)だ。値下がりが続き、半値になるまで保有を続けてしまった。ただ持っていただけでなく、下がる過程で何回か買い増しし、最後にまとめて損切りするときに大きな損失が出た。「下がる小型株は、問答無用で損切り」を信念としていた筆者としてはとんでもない失態である。
<昭文社(9475)の株価推移:1999年3月~2001年12月>

(注:筆者作成)
なぜ、筆者はずるずる値下がりが続く昭文社株をすぐ売らなかったのか。昭文社が将来大きく成長すると確信していたことが敗因である。思い込みが激しかったので間違いに気づくのに時間がかかった。