本記事は楽天証券が提供する「トウシル」の「TOP 3分でわかる!今日の投資戦略」からの転載です。
今日のポイント
- 金相場上昇の背景は米金利低下とドル安だけなのか
- 株式市場は「2021年に向け景気は持ち直す」を織り込むか
- 夏枯れの8月、2021年は日米増益予想:年末高はあるか?
- 米国市場の業績見通しで確認する「グロース主導の相場」
- DXの普及加速:ナスダックの押し目は狙うべき?
これら5点について、楽天証券経済研究所チーフグローバルストラテジストの香川睦氏の見解を紹介する。
金相場上昇の背景は米金利低下とドル安だけなのか
ウイルス感染拡大を巡る不安と金融緩和長期化期待が綱引きする中、株式市場は上値の重い展開となっている。為替では、EU(欧州連合)の景気対策期待を受けてユーロが堅調となる一方、米ドル(ドル指数)が約2年ぶり低水準に下落。105円前後の円高につながっている。
こうした中、NY金先物が(2011年9月以来)約9年ぶりに高値を更新して注目されている。29日の終値(1953ドル/トロイオンス)は年初来で約28%の上昇で「2000ドル突破」も視野に入ってきた。
金相場堅調の要因は、
(1)コロナ感染拡大に伴う経済の先行き不透明感
(2)米国の名目金利や実質金利の低下(図表1)
(3)米ドル下落に備える「代替通貨」需要
(4)株式や債券など伝統的資産と特徴が異なる「代替資産(オルタナティブ)」需要
(5)有事発生に備える「リスクヘッジ」(いざという時の金保有)需要
などが挙げられる。
特に(5)については、米トランプ政権がポンペオ国務長官のスピーチ(7月23日)で対中政策を「安全保障面の脅威」を重視した強硬姿勢に転じ、中国共産党や習近平総書記を名指しで批判し始めた。
大統領選挙に向け支持率で劣勢が鮮明となっているトランプ大統領が、東シナ海(南沙諸島)や台湾海峡での中国の覇権を許さない姿勢を示して「強い大統領」をアピールし始めたとの見方も有力である。
軍事衝突の緊張が高まり(株式やドルが下落する際は)金相場が上昇する「リスク分散効果」も想定されているかのようだ。
<図表1>実質金利の低下が金相場上昇の主要因

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2008年初~2020年7月29日)