ガートナー ジャパンは、企業がウェブ会議ソリューションを利用するに当たり直面している課題について留意点を発表した。
2020年1月に国内企業を対象に実施した調査では、既に多くの企業がウェブ会議ソリューションを採用していたものの、「ほとんど全ての従業員が利用している」と回答した企業の割合は20%程度だった。

また2020年3〜6月に受けたウェブ会議ソリューションの利用に関する問い合わせから、音声/映像の品質劣化問題や製品/サービスの選定に関する課題が浮き彫りになっており、セキュリティ上の懸念に関する課題も持ち上がっていることが分かった。
品質劣化問題についてガートナーは、ウェブ会議ソリューションには完全な品質は求められないと認識した上で利用することが重要だとした。そしてIT部門が取るべき基本的な対策は、品質劣化を引き起こすボトルネックを特定し、その過負荷の解消に努めることだとしている。
具体的には、契約回線の帯域の見直しやVPN(仮想私設網)機器の増強が挙げられ、会社支給のモバイル端末を利用し、通信環境を改善する手も考えられるとしている。またPCでウェブ会議ソリューションを使用する場合は、無線LANから有線LANに切り替えることでも、ある程度品質を向上させられるという。一方帯域を使いすぎないように会議では映像を利用せず音声のみを使うという企業もあるが、テクノロジーのメリットを十分に得るためには、こうした策は極力避けるべきだとしている。
またツールの選定については、会議の参加者や目的に応じて複数のツールを使い分けることが1つの選択肢となるとしている。
セキュリティの課題については、「誰と誰がいつ会議をするのか分からない」「ほかのアプリケーションとの連携により、情報が漏れるかもしれない」「先方から指定されたツールはそもそも管理できない」といった懸念事項が企業から挙がっていると指摘している。
ガートナーでは、法人向けのサービスを利用し、アカウントや会議参加者の把握および制限を可能にすることと、パスワードを設定し、第三者が容易に会議に参加できないようにすることを推奨している。その上で、ビジネスでの利用においては、音声/映像および画面共有を介したコミュニケーションに限定し、ウェブ会議ソリューションに実装されているファイル転送/共有機能の利用や別のアプリとの連携を安易に許可しないことが重要になるとしている。
また、社外の相手が希望するツールを使って会議に参加する場合は、社内標準デバイスの利用やセキュリティゲートウェイ経由での利用を会議参加の前提とする対策を取るべきだとしている。具体的には、PCやモバイル端末などのエンドポイントの管理ツール、および社内ネットワーク管理ツールを用いて、ウェブ会議ツールの利用動向の把握ならびに、必要に応じたフィルタリングを実施することが有効だという。
さらに社内であろうと社外であろうと、全てのコミュニケーションには通常の社外コミュニケーションと同等のコンプライアンスが適応されることを改めて周知させる必要があるとし、ウェブ会議では実際の参加者が当該の会議に招待された本人かどうかを見極めるのが難しい点に留意し、社内で継続的に啓発活動を行うことが重要だとしている。