はじめに
新型コロナウイルス感染症拡大などによる外部環境の急激な変化、ビジネスのグローバル化、新興国の台頭、顧客ニーズの多様化など、企業を取り巻くビジネス環境が目まぐるしく変化している。抜本的なビジネス改革が求められる中、社会的、技術的にデジタルへの注目が集まっている。各企業のデジタル化によるビジネス改革は不可避となりつつある。
「モノのサービス化」、「意思決定の迅速化」、「業務改革」など、競争力を強化するためのデジタル化はさまざまだが、それらの新たに生み出されるデータと既存システムに散在するデータをつなぎ、体系的に価値を引き出してビジネス価値に変換するという取り組みが“データマネジメント”だ。
いかに利用価値の高いデータを維持、管理、提供できるかが、競合と差別化を図る最も重要な要素となる現在、データマネジメントはデジタル改革の成否を決めると言っても過言ではない。
本連載では、ビジネスを大きく動かし、競争に勝ち続けるために必要となるデジタル時代のデータマネジメントを5回にわたって解説する。
データマネジメントの必要性の高まり
総務省による「令和元年版情報通信白書」(PDF)では、デジタル経済の特質の一つとして、データが価値創出の源泉であり、データに価値をもたらす「4V」(「volume(量)」、「variety(多様性)」、「velocity(速度)」、「veracity(正確性)」)が、価値創出の源泉となる仕組みであると述べている。
デジタルテクノロジーが急激に進歩し、経済活動全体でデジタル化が進む中で、企業で生み出されているデータは増加、多種多様化している。同時にデータ要求も多様化、複雑化している一方で、法規制対応など、データを取り扱うリスクや責任も増大している。データマネジメントの必要性は年々高まっている(図1)。
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データを資産と捉え価値を引き出すためには
データ資産化の実現には、「データの価値」を向上させる施策と、ビジネスへ損害を与える可能性のある「データのリスク」を軽減させる施策が求められる。
データの価値を高めるためには、品質を向上させ、誰もが簡単、スピーディに活用できることが必要である。また、データのリスクを軽減させるためには、リスクに関する情報を公開、利用者に理解してもらうなどの配慮が必要となる。具体的な施策例については図2を参照いただきたい。
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データマネジメントによりデータを資産化すると、信頼性のあるデータを誰もが簡単に利用しやすくなり、企業全体でデータを安心、安全、簡単に活用できるようになる。
この状態が継続できるということは、企業全体でデータドリブンを文化として成熟できているということを意味している。データドリブンは、データから価値創出するために必須の観点であり、デジタル改革の成功には欠かせない重要な要素になる。