Microsoftは米国時間8月20日、プログラミング言語「TypeScript」の最新版となる「TypeScript 4.0」を公開した。同言語は大規模な「JavaScript」ウェブアプリケーションの構築で高い人気を誇っている。
バージョン4.0は技術的に大きなマイルストーンとなるもので、多数の新機能が提供されている。TypeScriptの開発者で、MicrosoftのテクニカルフェローであるAnders Hejlsberg氏によると、これは2年前に「TypeScript 3.0」を公開して以来、同氏のチームが注力してきたことの集大成だという。
今回の変更には、同社の「Visual Studio Code」といったコードエディターとの使用体験や、エラーメッセージとリファクタリングの改善など、いくつか主要なテーマがあると、Hejlsberg氏は述べている。
「ユーザーは、非常に大規模なプロジェクトでTypeScriptを使い始めているため、とりわけパフォーマンスと拡張性に力を入れた。何十万行ものコードを含むプロジェクトでも、超高速な性能を求めているが、これは簡単に解決できる問題ではなかった」(同氏)
Microsoftは2012年に、JavaScriptのスーパーセットとしてTypeScriptを発表した。2020年7月時点で、調査会社RedMonkによるプログラミング言語の人気ランキングでトップ10に入っている。
RedMonkのアナリストであるStephen O'Grady氏は、TypeScriptの人気は持続性があり、「まぐれ当たり」ではないと考える。JavaScriptが広く普及しているほか、オプションで型の安全性を提供しているからだ。
Microsoftによると、JavaScriptパッケージ管理ツール「npm」では7月に、TypeScriptのダウンロード数が5000万件を突破した。
TypeScript 4.0で改善されているパフォーマンスの1つに、大規模プロジェクトでの起動時間の遅さがある。
TypeScriptチームのDaniel Rosenwasser氏による説明では、原因は通常、複数の依存関係を解決する「プロジェクトローディング」というプロセスにある。そのためチームは、起動時のパーシャルエディティングモードに取り組んできたという。
「中核となるアイデアは、エディターが開いた現在のファイルだけを参照する、軽量なパーシャルサーバーをエディターが実行できるようにするというものだ」(同氏)
利用できる情報は限られるが、基本的なコードの補完や最初にエディターを開いたときに素早く参照する情報としては十分だという。
Rosenwasser氏によると、これまでVisual Studio CodeのファイルでTypeScriptが反応するまで、1分程度かかるマシンもあったが、TypeScript 4.0の新モードではその時間を数秒に短縮できる。
また、TypeScript 4.0の改善点の1つに、強化された自動インポートがある。これまでは、自動インポートが期待通りに動作せず、開発者の生産性に悪影響を及ぼすことがあった。TypeScriptで記述した依存関係は、プロジェクト内で少なくとも1つ明示的インポートを記述しなければ、自動インポートが機能しないという声がユーザーから寄せられていた。
「TypeScript 4.0ではエディターのシナリオに、package.jsonの依存関係フィールドにリストした一部のパッケージを含めるようにした。これらのパッケージの情報は自動インポートを改善するためにだけ使用され、型チェックなど、ほかのことは変更しない」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。