“働き方改革の最後の砦”--シスコ、オフィスの固定電話をクラウド化する取り組み強化 - 4/8

渡邉利和

2020-08-24 11:30

 シスコシステムズは8月21日、オフィスとリモートを併用する“ハイブリッドな働き方”をサポートする取り組みについて、オンライン形式で報道機関向け説明会を開催した。

シスコシステムズ 代表執行役員 社長のDave West氏
シスコシステムズ 代表執行役員 社長のDave West氏

 冒頭、代表執行役員 社長のDave West氏は「この1年で世界の在り方はあまりに大きく変化した」と語った。ちょうど1年前に開催された説明会では、2020年の東京五輪に備えて、まだまだ低かった日本のテレワーク実施率が一気に高まることを期待しつつ、オンライン会議ツール「Cisco Webex」の「働き方改革支援 特別プラン」の提供を開始すると発表。ソリューションを実地で確認できる「ショーケース」を同社内に開設した。

 それから1年が経過した現在、「3密を避ける」という都合上、オンラインでの説明会が中心となり、ショーケースに足を運ぶという機会も激減している状況だ。さらに言えば、東京五輪の延期が決定される一方、コロナ禍の影響でテレワーク/在宅勤務が広範に実施されるなど、同氏の言うように「世界が激変した」ことを端的に示すこととなった。

 とはいえ、東京五輪に向けたテレワーク導入の取り組みが今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行に対しても有効な準備となった側面もあり、この点は不幸中の幸いと言っても良さそうだ。この1年でWebexの日本国内での利用状況は、ユーザー数が3倍、会議参加者数が8倍、会議開催数が5倍になったという。また、5回にわたって国内にサービス提供するデータセンターの規模を拡大した。

 具体的な数字としては、会議参加者数は2019年8月時点では月間120万人だったが、現在は月間150万人と8.75倍に増加、会議開催数は月間35万~40万回だったのが現在は160万~170万回になっているという。こうした状況を踏まえて同氏は、「日本でもデジタルシフトが急速に進行しつつある」とした上で「Secure Work from Anywhere」(どこからでも安全に働く)というコンセプトを掲げ、同社のコミットメントとして「全ての“セキュアリモートワーカー”を支援する」と表明した。

 続いて、執行役員 コラボレーションアーキテクチャ事業担当の石黒圭祐氏が、ハイブリッド型ワークスタイルにおけるWebexの利用状況と今後の展望について説明した。

 同氏は、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて社会全体が変化し、「オンラインでの働き方がこれからの標準」になると指摘。従来の「オフィスで働くことを前提」とした状況は変化するが、オフィスが完全に不要になるというわけではない。今後はオフィスの役割が変わり、リモートワーク/テレワークと組み合わされることで新しいワークスタイルを構成する「ハイブリッド型」になり、常にオンラインでつながっており、かつセキュリティが保たれている必要がある。

 また同氏は「Cisco Webexはクラウドファースト。加えてハイブリッド環境を提供」するといい、「安心・安全なクラウド基盤」をベースにコミュニケーション環境を構築するとした。働き方改革支援 特別プランの刷新も発表されたことに加え、昨今の在宅勤務の導入経験から「自宅で会社と同等の仕事環境を構築」するニーズが高いことを踏まえ、「Cisco Webex 働き方改革支援 特別プラン(ビデオ端末版)」の提供も予定していることも明らかにした。

 最後に、クラウド&ホスティッドコーリング営業部 マネージャの泰道亜季氏が「セキュア プライベート クラウド電話サービス(UCM Cloud)」について説明した。ハイブリッド型ワークスタイルで課題となる点として、同氏は従来の“会社の固定電話”を挙げた。「どこにいても同じように働ける」ためには、オフィスに掛かってくる電話にもリモートで応対できる必要がある。しかし、実際にはこれが実現できていない企業は少なくなく、急きょ在宅勤務を迫られた昨今、「連絡は電子メールで」という形で電話の利用そのものを制限している例が珍しくない。

 この点を同氏は「働き方改革の最後の砦」と表現し、適切なソリューションが望まれているとした。同社では、音声電話ソリューションとして「オンプレミス型CUCM(Cisco Unified Communications Manager)」や、パブリッククラウドで提供するPBX(構内交換機)「Cisco Webex Calling」を提供している。

 それ加えて、CUCMのクラウド版「Cisco Unified Communications Manager Cloud(CUCM Cloud)」も今夏から提供されることが紹介された。オンプレミスにあるCUCM環境のクラウド移行、パブリッククラウドでは難しいカスタマイズや外部ツール連携などに対応するソリューションとなる。

 当初想定されていた「オリンピック開催期間中のテレワーク」という状況とは異なり、現在はいつまで続くか明確な期限が分からないまま、急きょ在宅勤務/テレワークに踏み切らざるを得なくなった企業が多数存在している。その中で、「やってみて初めて分かった課題/問題点」も多数明らかになってきており、ソリューション提供側でもこうした課題に対応していることが求められている。同社の「ハイブリッド型ワークスタイル」への支援策は、1年前に提案された時点からさまざまな改善を加えて刷新された形であり、多くのユーザー企業の期待に応えるものになっているのではないだろうか。

働き方改革支援 特別プラン(リニューアル)の概要。

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