最近になって、組織全体の情報のガバナンス、管理、活用を担う役職である最高データ責任者(CDO)の台頭が急速に進んでいる。CDOを置いている企業の数は2012年から4年ほどの間に4倍以上になったとの調査結果があるほか、調査会社のGartnerは以前、2019年までに大企業の90%がCDOを置くと推定していた。
しかし、CDOの役割はあまり明確になっていないことが多い。コンサルティング企業のNewVantage Partnersによれば、この役職が「成功しており、確立されている」と考えているCDOは28%にすぎないという。
では、CDOはどうすれば組織に対する影響力を高められるのだろうか。この記事では、Aldermore BankのCDOであり、Bank of EnglandやHSBCでもCDOを務めた経験を持つHany Choueiri氏から、力を発揮したいと考えているCDOが従うべき3つのベストプラクティスについて話を聞いた。
1.データを活用するメリットを伝える
Choueiri氏によれば、多くのCDOは、データのガバナンスの必要性と、データから得られる知見の活用とのバランスを取ることが難しいと考えているという。
「私に言わせれば、従来のCDOが抱えている最大の問題は、コンプライアンスを守らせることが仕事だと思われてしまっていることだ。CDOは、ポリシーや標準を設定し、それが守られているかどうかをチェックする人間だと見られてしまっている。多くのCDOが、本来あるべき姿よりも成功できていないのは、これが理由だろう」と同氏は言う。
2018年9月からAldermoreのCDOを務めているChoueiri氏は、優れたCDOは、ガバナンスだけでなく、事業部門の人々に対して情報を知恵に変えるテクノロジーを提供することに力を入れていると話す。
「データの力や、データを使うメリットを伝え、データを活用するためのツールや機能を提供できなければ、CDOの戦いは負けであり、周囲からは何をやっているのかと問われることになる。提供すべきツールは、各従業員が簡単に使えるアナリティクスツールかもしれないし、日々提供される正確な業務レポートかもしれない」と同氏は言う。
CDOは、データ部門が支援することで生み出されるものの価値を、事業部門のスタッフ全員に理解してもらう必要があるとChoueiri氏は言う。これは、CDOが成功するためには、データの取り扱いに関する能力よりも、コミュニケーション能力の方が重要である場合が多いことを意味している。「優れたCDOはマーケティングを得意としており、優秀なセールスマンのような能力を持っている」と同氏は言う。