PwC Japanグループは8月25日、「2020年AI予測調査」の日本版に関するオンライン説明会を開催した。日米におけるAI(人工知能)の活用動向と優先課題を明らかにした。
PwCでは、今後3~5年にわたり、あらゆる業界のビジネスに最もインパクトを与える8つのテクノロジーを「Essential Eight」と定義。新興技術の掛け合わせは新たなイノベーションを起こすが、中でもAIは中心的な役割を果たしている。PwCは、AIと新興技術を活用した製品やサービスを「スマート・テック・アプリケーション」と呼んでいる。

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2020年AI予測調査では、日米におけるAI活用動向と優先課題が明らかにされている。米国では2019年10月にオンラインで調査し、1062人から回答を得た。日本は2020年3月に320人から回答を得た。AIを導入済みまたは導入検討中の企業の部長職以上を対象にアンケートした。
その結果、「2020年にAIが貴社の既存ビジネスを破壊し始めることに対して十分に準備できていますか?」という質問に対し、日本企業は「準備済み」とする回答が50%、米国企業は82%だったことが分かった。PwCコンサルティング シニア・アドバイザーのYann Bonduelle氏は「AIによる創造的破壊に対する日米での認識の差は大きい」と分析する。
「今後5年以内に脅威になると見ているAIに関するシナリオ」については、「事業展開をしているセクターの1つ以上をAIが破壊」するとした回答が日本は15%だったのに対して米国は35%だった。これについて、Bonduelle氏は「AIがもたらす脅威に対する意識の欠如」と指摘した。
その上で日本企業が今後数年間に取り組むべき優先課題として、「AI活用の目標の明確化」「AI活用の目標達成に向けた各種基盤の構築」「AI活用の加速化と利用範囲の拡大」の3つを挙げる。
AI活用の目標の明確化については、「AIの活用が進んでいる企業ほど、AI活用の明確な目標を掲げている傾向にある」(Bonduelle氏)という。実際、2020年の優先課題について、「AI活用向けのビジネスケース作成」と答えた企業は日本が8%、米国が20%だった。「AIの投資利益率(ROI)の測定」では、日本企業が6%、米国企業が24%と明確な差があった。
AI活用の目標達成に向けたデータ基盤の構築については、データ整備に関連する課題が上位を占めた。人材とスキルの基盤では、ほぼ全ての回答者がAIの活用やその準備のために人事関連の取り組みを行っているという結果になった。また、AIへの準備度合いに経営幹部の関与が影響していることも分かった。
その上で、AI活用の目標達成に向けた各種基盤の構築には、「データトランザクションにおける全てのコンポーネントがデータドリブンになる必要がある」(Bonduelle氏)と提言した。
AI活用の加速化と利用範囲の拡大に関しては、「米国ではAI活用の目標を明確にする取り組みを優先している」とBonduelle氏は指摘する。実際に米国企業では「ROI測定」(24%)、「ビジネスケース作成」(20%)、「予算承認獲得」(18%)に課題が集中する一方で、日本企業の場合は「試験段階から実用段階への移行」(11%)、「他テクノロジーとの融合管理」(10%)、「実用段階を維持」(8%)など全体にばらけている印象だ。