会社から見ると、「仕事がきつくないから嬉しい」とか「休暇がたくさん取れるから良い」というような社員を多く抱えていたいということではないはずです。満足しているというのと、業績やパフォーマンスはどうなのというのを関連付けて考えた時、「満足度を上げること自体が会社全体の業績を引き上げるとは言い切れない」という結論に至ったのです。
そこで、満足に変わる概念としてどのようなものがあるか、どのようなものを考えなければいけないのか、ということで出てきたのが「エンゲージメント」というキーワードです。
エンゲージしている従業員とは
エンゲージメントという単語が元々持つ意味を先ほど話しましたが、社員エンゲージメントという文脈で出てきた時の解釈としては、”会社や組織の方針や戦略に共感し、誇りを持っており、さらに自発的に仕事に取り組もうとしている従業員”が「エンゲージしている従業員」となります。
エンゲージしている従業員というのは、次のような行動をする人たちになります。時間や労力をかけることを厭わず、熱中して黙っていてもどんどん働いてしまう人――あまりやり過ぎるとブラック企業のようになってしまいますが――それを自発的にやっている人。自分の仕事が好きだ、自分の会社が好きだ、だからもっと良いものを出したいということで、時間や労力をかける、それを厭わないでやっていくような人。従来から良いとされるやり方を試すだけでなく、新しい方法を工夫したら良くなるのではないかということに自ら取り組むような人。自分の役割や組織に縛られるのではなく、もっと良くなるならここまでやってみようと積極的に枠を超えてでも協力や仕事をしようとする人。会社や組織の戦略や目標をすごく良いと感じ、その実現のためならば自分も参加したい、ぜひ貢献したいと思っているような姿勢を持っている人。あとは、「この会社は素晴らしい」と他の人に対しても自信を持って推奨するような人です。
こういうのがエンゲージしている姿なのですよ、という言い方をしています。
提供:クアルトリクス
――一言で説明するとどのような感じになるのでしょう。
そうですね、「一言で言ってくれ」とよく言われるのですが、なかなか一言にはならないですね。先ほど、行動パターンとか、このような解釈ですというのをいくつか挙げましたが、その中で1つを特に強調して選ぶとすると、”自発的に取り組む貢献意欲を持っているというのがエンゲージしている状態”、”自発的に貢献したいという意欲を持って仕事をしている姿”という言い方になります。
一般のマネージャーの方々に「エンゲージメントは今、少しは浸透してきているから、お分かりなのでは」と言っても、やはり、なかなか分かってもらえません。「エンゲージメント調査をやります。エンゲージメント調査を知っていますか」という話をHRの枠を超えてしようとすると、やはり、分からない方が多分多いのではないかと思います。
会社としてエンゲージメント調査をやっているような場合でも、社内での調査の呼び方を「エンゲージメント調査」としてもちょっとピンと来ないので「社員意識調査」と単に呼んでいるところもあります。もっと極端な例だと、「社員満足度調査と言った方が皆わかるので」というのもあります。さっき申し上げたように、エンゲージメントと満足度は違うというのはすごく大事な話なのですが、人事の人たちとしてはそこを分かった上で、「社員満足度調査と言った方が分かりやすいので」としていることはあります。
このエンゲージメントという言葉をあえて社内に浸透させていくといった場合にもっと一言で言うと、”自発的に貢献意欲を持って自ら進んで仕事に取り組むような人たち”のことで、そういった状態が「エンゲージしている」となると思います。
エンゲージメントとイネーブルメント
――"何が何にエンゲージしている”という見方をした時、”社員が企業に対してエンゲージしている”という捉え方でよいのでしょうか。
社員が企業、そして、自分の仕事に対してエンゲージですね。
ここは、解釈的に若干違う説明をしている場合もあります。”会社も社員に対してエンゲージしている”というように、双方向だという説明をしようとするケースもあります。
つまり、会社が社員に対して育成であるとか、雇用の確保とか、仕事をできる場を提供するとか、そういう部分でしっかりとコミットしていきます、という意味で、社員だけでなく、会社もだという言い方をするケースもあります。
ですが、元々の従業員エンゲージメントというのは、社員がどれだけ会社や仕事に対してエンゲージしているか、という解釈です。