ですから、会社が質問として聞いた時、社員の多くがネガティブに回答するテーマが出てきます。たとえば、「ワークライフバランスについて、この会社はほとんどブラックです。もう残業続きでヘトヘトです」と。そして、統計分析によって、そのようにすごくネガティブな反応が現れた要素とエンゲージメントに強い相関が見られるという結果が得られたとします。
すると、企業は、エンゲージメントが他社に比べて低いと考えなければいけないレベルにある場合、「ワークライフバランスができていない。それがエンゲージメントに対してインパクトを結構与えていたようだ」というならば、「家庭と仕事を両立できるような施策とは何か。制度改定した方がいいのか。もっとダイバーシティーを生かすような働き方ができる制度を導入しよう」というにアクションを取るというのが一般的な考え方です。
データで見るアクションの重要性
――いろいろな項目を網羅した調査を実施し、低い結果の部分が見つかれば、その部分を改善するようなアクションを取るというところまでが大事だということですね。
そうです。それを示すようなデータもあります。これは、2019年10~12月に弊社が主体で実施した調査になります。
調査では、あなたの会社では「フィードバックする機会、つまり、社員から言いたいことを会社に伝える機会がありますか」ということをまず聞いています。そして、「その伝える機会がどれだけの頻度でありますか」というのを聞いています。たとえば、年に1回そのような調査があって、「皆さんどう思っているか声を聞かせてください」ということをやっているのか、もっと細かく四半期に1回やっています、毎月やっていますというものなのか。さらに、「そういったフィードバックを会社は生かしていますか」を聞いています。つまり、アクションを取っているか、いないかですね。結果の棒グラフは、その回答におけるエンゲージメントのレベルになります。
フィードバックの機会がある方が、「自分たちの声を聞いてもらえる」という安心感があったり、「会社も社員のことを考えてくれている」と思えることもあったりして、エンゲージメントレベルが高めです。頻度が高い方がインパクトはあるようで、四半期に1回以上の方が1年に1〜2回という回答よりもエンゲージメントレベルが高めです。ですが、決定的な差が見られるのは、アクションを取っているかどうかで、これが一番大事です。
提供:クアルトリクス
「声は聞いています。頻度も高く聞いています」といっても、何もやってないのでは意味がありません。かえって不信感を招くことになります。こういった調査をやって、「自分たちはここがダメ」ということが分かっても、会社が何も手を打とうとしなければ、「無関心だ」「自分たちの声が無視されている」と社員は感じ、逆にエンゲージメントレベルを下げる結果になります。「こんな会社で頑張っていても意味があるのだろうか。問題が少しでも良くなればと思って提言したのに、何も聞いてくれない」ということになるといけない、ということです。
もちろん、社員意識調査というのは1つのコミュニケーションのツールでしかありません。エンゲージメント調査をやっていなければ、エンゲージメントのレベルを上げられませんとか、下がりますとか、そういう話ではもちろんありません。ですが、たとえば、上がったことを知るのはどうしたらよいかという話で考えると、”見える化”というか、数字で表せるようなアプローチを取っていることがすごく有効です。数字としてエンゲージメントが今どのくらいか。それが前回よりも上がったか下がったか。そういうことを把握しようとすると、こういったエンプロイサーベイというのは有効なツールだと思います。
――調査を定期的に実施し、数値が上がったかどうかということで、エンゲージメントが上がったかどうかを知るということですね。
満足度調査でも何でもそうなのですが、社員向けの調査というのは、単発で「2020年やりました、これが最初で最後です」みたいなことだと、その時の結果にすごく悪いものがあり、何らかの課題が見られるようなものがあれば、「そこがダメだったんですね」というのは分かります。しかし、それに対してアクションを取っても、その後でまた同じような数字で見ない限り、良くなったか良くなっていないかは分かりません。
ですので、大体こういった社員向けの調査というのは、継続的に繰り返し実施しましょうとなります。それが毎年なのか、半年なのか、四半期なのか。考え方は各社によって違います。ですが、単発では意味がないというのはHRの皆さん、よく理解されています。