従業員エンゲージメントとは(後編)行動が重要、コロナ禍でも向上可能な理由 - (page 3)

河部恭紀 (編集部)

2020-08-31 07:40

調査で見られる変化

 ――調査を受ける側の社員から見た時、年に1〜2回ぐらいなら「まぁ、いいか」と思うのですが、頻度が多いと「またか」みたいな感覚になります。調査の頻度はどの程度が妥当なのでしょうか。

 伝統的にはエンゲージメント調査の実施は、年に1回という感じが一般的でした。というのは、もっと頻度を高くしたくても、特に大企業の場合ですと、準備し、調査サイトをセットアップし、全従業員に対してアナウンスし、回答してもらい、出てきた結果を集計、分析、解釈し、報告書にまとめて、といったことが非常に手間や労力のかかるものだったのです。その時、調査での設問数がよく話題になりますけども、たとえば、50問、60問、70問、下手すると100問近く聞いています、というようなのがこれまでの方法です。

 そうなると、社員側からすると「なんだか長いし、回答するのが面倒くさい。今、忙しいんだ」というような話になってしまいます。それがましてや年に何回も来るとなると、「こないだも同じようなのをやっていたよね」と。「調査疲れ」などという言い方をしますけれど、これでは、皆、真面目な回答をしなくなってしまいます。

 これがだいぶ変わってきたのには、1つにテクノロジーの進化というのがあると思います。調査を簡単に実施できるようになってきたのです。

 たとえば、調査サイトをセットアップするのも、お客様側で設問を簡単に追加する、というようなことが可能になっていたりしています。集計結果も、調査がクローズした時点で、回答として集まっているデータから自動的にグラフ化できるようになっていたりします。これにより、非常にスピーディーに、労力をあまりかけなくても調査結果を見ることができるようになりました。

トレンドは「カンタン」「いつでも」「あらゆるテーマ」

 今、こういったエンプロイメント調査の潮流が3つぐらいあります。

 1つ目は、調査の実施を考える回数が増えたと思います。特に、これは、コロナの影響もあると思います。リモートワークで顔の見えなくなった社員が今何を考えているのだろうと。その声を聞くためにはオンライン上でデータを集めるしかない、ということで、エンプロイメント調査に関心を持つ会社が増えてきたというのが1つのトレンドです。

 2つ目は、「頻度は1年に1回、2年に1回で良いのだろうか」となっています。というのは、特にコロナに関して言うと、状況が刻々と変わっているわけです。4月に緊急事態宣言が発令され、5月に解除されました。もう大丈夫なのかなと思ったら、感染者数がまた増えてきました。これにより、在宅勤務になって、その後、オフィスに戻り始めましたが、再び在宅勤務に、というように状況が刻々と変わっている中で、社員の声を1年に1回聞きましょう、ということではダメだと。

 もちろん、今のコロナというのは極めて稀な状況であることは間違いないですけど、社員の声に耳を傾ける頻度は、1年に1回とかではなく、社内で重要な出来事があった時、あるいは、入社や研修の受講、昇進というような社員個別の体験があった時といった、エンゲージメントに影響を与えるようなことが起きるタイミングの方が良いのではと。ということで、頻度が高くなってきているというのが2つ目のトレンドです。

 3つ目のトレンドですが、別にエンゲージメントを聞かない調査でも良いのはないか、ということです。たとえば、社内で大きな制度改革をしたとします。その時、その制度改革に対する良い・悪いといったフィードバックが社員から得られるようになっているか。別にエンゲージメントについて聞くという調査でなくでもよく、社員の声を集めて状況を判断するということで、いろいろなテーマが出てきています。

 ですから、社員の声を大事にするというのは、各社とももう避けては通れないテーマとしてあります。その上で、どのくらいの頻度で聞きましょうかといった時には、1年に1回や2年に1回ではなく、もう少し頻度高くやった方が良さそうだと。さらには、テーマもエンゲージメントを強調して聞くのではなく、もっと具体的な絞り込まれたテーマを設定するというのが潮流かなと思います。

 とはいえ、何度も調査したら社員が疲れてしまうという心配もあります。ですが、テーマを絞り込むことで設問数を10問というようにかなり抑えれば、全部答えても2〜3分で終わりますよね。60問、70問、80問を20分かけて答えて下さいというものではない、もっと簡単でテーマも限定されたものになっていれば、社員もついて来られるのではと思います。

 先ほどの通り、フィードバックの機会自体あった方が良いというのが傾向として出ています。社員は、「自分たちには言いたいことがある」と考えていて、それを正式に言う場があった方が安心する。「自分ももっと参画したい、会社の動きに参加したい」というようなことにもつながるので、そのような機会はあった方が良いでしょう。軽く簡単に答えられて、結果がタイムリーに出て、それに基づいて何らかのアクションが取られるというならば、社員とっても損はないわけです。

 やはり、会社としても、全部ではないにしても「アクションをちゃんと取ります」ということを決めて行動しようとしているのであれば、社員にとってもプラスの話なので調査に参加してもらえる、という流れです。

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