企業セキュリティの歩き方

新型コロナパンデミック後のITとセキュリティ--リモートワークに生じた不都合な真実とは?

武田一城

2020-09-02 06:00

 本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティを向上させていくための視点やヒントを提示する。

 前回に引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックとそれに伴って急激に起こると予想される社会構造の変化、変化に対応するITやセキュリティ対策について述べていく。なお、筆者は企業経営を考える上で必要な社会におけるIT活用とセキュリティ対策について述べた緊急レポート「『withコロナ』経営者が今やるべきこと」を執筆し、8月6日に公開した。本稿ではその概要やレポートに書き切れなかったこと、別の切り口での説明なども併せて述べていきたい。

日本企業のほとんどが想定していなかった大規模リモートワーク

 日本企業がリモートワークの重要性を把握したのは、新型コロナウイルスの流行が初めてではないと筆者は考えている。もちろん、前回述べたように、人類は歴史上何度もパンデミックと呼ばれる状況を経験してきたが、今回まで「リモートワーク」という働き方を本当の意味で想定して来なかった。いや、むしろ、できなかったという方がより適切だろう。

 人類がデジタルコンテンツを配信できる通信環境を手に入れたのは、インターネットの常時接続が普及してからであり、それはISDNやADSLを含めても、たかだか20年ほどの歴史しかない。それ以前は、手紙や電話でしか遠隔地とコミュニケーションが取れなかっただけに、リモートワークという働き方は夢のような話だった。しかし、現在では高速の光ファイバー回線やWi-Fi、携帯電話の無線通信網が全国に張り巡らされて、場所を問わず動画などのリッチコンテンツによるコミュニケーションが可能となった。

 日本企業でリモートワークの必要性が論じられ始めたのは、いつ頃だったろうか。筆者の記憶では、2002~2003年に発生した重症急性呼吸器症候群「SARS」だったと思う。この時、日本は疑いの例が報告されたのみで実質的な被害は無く、日本での社会的な影響はほぼ皆無だったといえる。そのため、この時はあくまで可能性として、パンデミック状況下でのリモートワークの是非について議論されたに過ぎなかったと言えるだろう。

 そして、その議論を経てもなお、リモートワークがどこでも行われるようになったわけではなかった。それまでにも存在したリモートアクセス用のSSL-VPN装置が、このことである程度普及したが、用途は一部の社員による試験的なリモートワークという位置付けだった。日本におけるリモートワークの“始まり”は、このようなパンデミック対応での検討と言って良いだろう。

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