前回の「Amazonはなぜ連続的なイノベーションが実現できるのか?」に引き続き、今回はAmazonのイノベーションを支える存在であるアマゾン ウェブ サービス(AWS)に焦点を当てながら、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進における顧客志向とテクノロジー活用の重要性について、PwC JapanグループのアライアンスパートナーであるAWSジャパン シニアアドボケイトの亀田治伸氏、Amazon Connect スペシャリストの羽富健次氏を招き、PwCの中山裕之氏と武藤隆是氏(以下敬称略)が議論する。
Amazonの進化を支える「Two Pizza Team」とAWS
中山:前回の対談では、Amazonが顧客志向であり続けるためのメカニズム、イノベーション文化を支える「OLP(Our Leadership Principles)」、そして、それを具現化する「ビルダー」の存在などを挙げていただきました。これらの要素により、Amazonでは“徹底した顧客体験(X)の向上”を目指し、ビジネス(B)およびテクノロジー(T)が“超高速”で連携しながら進化していて、PwCが提唱する「BXT(Business eXperience Technology)」コンセプトを体現しているという理解を強くしました。
今回は、BXTのうち"T"に該当するAWSを理解することで、日本企業のデジタル変革にクラウドがどのような効果をもたらすかについて考察していきたいと思います。
亀田:AWSの話題に入る前に、まずAmazonの「Two Pizza Team」を紹介します。前回触れました「全員がビルダー」という考え方とリンクしていますが、何らかのサービス開発プロジェクトにGoサインが出た時に、新たに組成されるチームの大きさについてです。あまり大きいチームを作り過ぎると機動力が減っていくので、「2枚のピザでちょうどお腹いっぱいになる程度にチームの人数をとどめましょう」という考え方です。このチームの中で、サービスロードマップの策定・開発・サポート・ドキュメント作成・収益への責任と、およそサービス開発にまつわる全てのタスクに責任を持ちます。
Amazonは、リコメンドエンジンに始まり、ドローン配送・倉庫の自動化・レジなし店舗・コールセンターでの問い合せ予測など、ありとあらゆることにトライしていますが、全てが最初から成功しているわけではないと考えています。それでも多くのイノベーションを起こしているのは、実験や失敗からの学びを強く推奨する文化があり、それが実現できるのも、ビルダーで形成されるTwo Pizza Teamの機動性とテクノロジー基盤としてのAWSがあるからだと考えています。
武藤:AWSというクラウドのサービスがあることが、Amazon全体のイノベーションのスピード・ボリュームを加速させているもう一つの大きな要因ということですね。
図表1:Two pizza Team