1991年8月25日、フィンランドの大学院生だったLinus Torvalds氏は、USENETのMINIXのニュースグループで、新しい無料のOSを作り始めていると発言した。同氏はこのとき、これは「単なる趣味で、GNUのような大規模なものでもプロフェッショナルなものでもなく、386(486)ATクローン用のものだ」と述べていた。29年後の現在、Linuxはコンピューティングの世界を支配する存在になっている。The Linux Foundationは、「2020 Linux Kernel History Report」の中で、このカーネルの誕生から2020年8月にリリースされた「Linuxカーネル 5.8」に至るまでの歴史を紹介している。
同組織は、これまでにもLinuxの歴史について説明したレポートを何本か発表しているが、今回のものには従来のものとは違う部分がある。これは、Daniel German博士の仕事と同氏が作ったツール「cregit」のおかげで、バージョン管理システム導入前(1991年9月~2002年2月4日)、「BitKeeper」期(2002年2月4日~2005年4月15日)、「Git」期(2005年4月16日以降)の3つの開発ステージすべてを追跡できるようになったためだ。cregitによって、開発者や研究者は、誰が主にソースコードを変更してきたかを追跡できる。
Linuxの歴史に詳しくない人は、2000年代にLinuxカーネルのバージョン管理が大きな問題になっていたことを知らないかもしれない。Linuxの開発は、10年以上にわたってバージョン管理システム(VCS)を使わずに行われていた。当時は、パッチをメーリングリストに投稿し、Torvalds氏がそれを受け入れれば、それを自分のソースツリーに適用して、ツリー全体の新しいリリースを投稿するという流れで動いていた。
「Concurrent Versions System(CVS)」や「Subversion」などのVCSは存在していたが、Torvalds氏はそれらを好まなかった。しかし、コミュニティからの強い働きかけがあったことなどから、Torvalds氏はようやく1つのツールを選んだ。それがBitKeeperだ。
これは、(控えめな表現をすれば)あまり受けのいい選択ではなかっただろう。なぜなら、BitKeeperはクローズドソースの商用システムだったからだ。Torvalds氏は、フリーソフトウェアでもまったく問題はないが、同氏は最高のVCSを必要としており、それがBitKeeperだったと主張した。