富士通がデジタルトランスフォーメーション(DX)企業へ向けて一大改革に乗り出した。社内の取り組みでは働き方と人事施策を刷新し、社員全員をDX人材にする構えだ。それらの陣頭指揮を執るキーパーソンのお二人に取材する機会を得たので、一大改革に臨む思いを聞くとともに、筆者の疑問もぶつけてみた。
社員それぞれが働き方を自ら“選択”できるように
富士通の社内改革におけるキーパーソンのお二人とは、執行役員常務 総務・人事本部長の平松浩樹氏と、執行役員常務 CIO(最高情報責任者)兼CDXO(最高DX責任者)補佐の福田譲氏である。お二人におよそ1時間、オンラインながら密度の濃い取材を行うことができた(写真1)。
写真1:富士通 執行役員常務 総務・人事本部長の平松浩樹氏(左)と、同社 執行役員常務 CIO兼CDXO補佐の福田譲氏
まずは、働き方と人事施策の刷新について。富士通は7月6日、ニューノーマル(新常態)に向けた新たな働き方として「Work Life Shift」を推進すると発表した。会見を行ったのは平松氏だ。その全容は関連記事を参照いただくとして、「通勤という概念をなくす」「現状のオフィス規模をこれから3年かけて50%程度に見直す」「適材適所ではなく“適所適材”を実現する」といった発言が印象的だった(関連記事)。
あれから2カ月。反響はどうか。平松氏はこう答えた。
「想像以上の反響があった。社内では事前に全社員からアンケートをとって、Work Life Shiftにできるだけ反映した。要望の多くは、社員それぞれが働き方を自ら“選択”できるようにしたいと。その方向性と思い切った施策を短期間で示したことで、社員も真剣に受け止めてくれたと確信している。ただ、働き方を自ら選択するためには、仕事のプロとしてしっかりと“自立”してもらわなければならない。Work Life Shiftには、そのメッセージが込められている」
加えて、社外からの反響も大きかったようだ。
「この2カ月間で、さまざまな業種の企業や公共機関から『取り組みの内容を詳しく教えてほしい』『一緒に何かやれないか』といったお問い合わせやお申し出を100件ほどいただいた。私たちも社内で実践したノウハウをDX企業として社外へも広くお役立てできるようにしたいと考えているので、外部からのご要望には全て対応させていただいている。それが、多くの日本企業にとっての変革へと広がっていくように貢献することも当社の使命だと考えている」(平松氏)
平松氏が発表した働き方と人事施策の刷新は、社内でDXを推進する役目を担う福田氏にとっても“車の両輪”となる動きだ。同氏は一連の社内の動きをどう見ているのか。
「私が富士通に入社した4月には、既に働き方や人事施策の刷新について議論が行われていた。だが、その後に目を見張ったのは、コロナ禍にもかかわらず議論がどんどん進んで詳細な案が作られ、それが経営会議でスピーディーに意思決定されて、7月6日の発表にこぎ着けたことだ。正直なところ、入社前は富士通のような巨大な日本企業の場合、意思決定のスピードに難があるのではないかというイメージもあったが、この一連の動きのスピード感には驚いた。みんなが本当に会社を変革しようという思いで動いている。実に頼もしい。私としてもやりがいがあると、強く感じているところだ」