富士通と東京品川病院は共同で、新型コロナウイルス肺炎の診断に有効とされる胸部CT(コンピューター断層撮影)検査による画像診断を支援する人工知能(AI)の研究開発を開始した。
この技術は、新型コロナウイルス肺炎が疑われる患者の胸部CT画像に対して、AIが肺の陰影の広がりなどを数値化や3次元で可視化するとともに感染の可能性を提示する。患者1人当たり数百枚に及ぶ胸部CT画像を目視で確認し、新型コロナウイルス肺炎か否かを診断する医師の負担を軽減するという。
想定される新型コロナウイルス感染症の検査の流れ(出典:富士通、東京品川病院)
今回の研究開発では、東京品川病院が有する過去の新型コロナウイルス肺炎の胸部CT画像データから、肺の異常陰影パターンを検出する。それらのデータをAIに学習させることで新型コロナウイルス肺炎の可能性を示すAIを開発し、その技術の有効性を両者で検証する。
画面イメージ(出典:富士通、東京品川病院)
新型コロナウイルス肺炎の診断では、肺に見られる異常陰影のパターンと肺全体の異常陰影の広がり方が診断に重要な情報となる。そこで、異常陰影のパターン検出は富士通研究所が開発したAIを活用して行う。さらにCT画像上で肺を右肺末梢、右肺中枢、左肺中枢、左肺末梢の4領域に分割し、各領域の上下方向の陰影分布をヒストグラム化する。
これにより、医師が胸部CT画像から肺炎の診断をする際、陰影の立体的な広がりを数百枚の胸部CT画像から目視で確認していた診断時間を短縮し、専門医だけでなく新型コロナウイルス肺炎の診断を効率的に行えるようになるという。
富士通は今後、共同開発した技術のサービス化を検討し、電子カルテ情報と連携させることで活用領域の拡大を目指す。東京品川病院は、院内で実施しているさまざまな研究との融合を目指し、新型コロナウイルス肺炎の診断治療に役立てるとしている。