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海外コメンタリー

量子インターネットとは、その可能性--今知っておきたいこと - (page 7)

Daphne Leprince-Ringuet (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2020-09-11 06:30

では何を期待すればいいのだろうか?

 科学者らは既に量子もつれを作り出す手段を確立しており、エンタングル状態を活用したQKDにも成功している。

 かなり以前から量子ネットワークに投資している中国は他国に先駆け、通信衛星を利用したかたちでの、エンタングル状態にある素粒子の配送に成功している。同国はこれにより、745マイル(約1200km)離れた地点間でのQKDという記録を打ち立てた。

 しかし、次なる難関が待ち受けている。それはインフラのスケールアップだ。今までのところすべての実験は2点間をつなぐものでしかない。ただ、2点間の通信を実現できた今、科学者らは複数の送信者と複数の受信者が地球規模の量子インターネットでデータを交換できるようなネットワークの構築に向けて取り組んでいる。

 このアイデアは本質的に、エンタングル状態にある素粒子をオンデマンドで大量に作り出し、遠くのさまざまな地点に同時に送り届けるための最適な方法を見つけ出すというものだ。これは言うほど簡単な話ではない。例えば、中国と米国に設置されているデバイスの間でエンタングル状態を維持させるには、新たなルーティングプロトコルの他に中継ノードも必要となるだろう。

 さらに、量子もつれ状態を配送するためのテクノロジーは、各国間で異なっている。中国が通信衛星を採用している一方、DoEは光ファイバーを採用しつつ、エンタングル状態にある素粒子を配送する距離を伸ばすための量子リピーターのネットワークを作り出す取り組みを続けている。

 さらに米国では、シカゴ郊外に設置された52マイル(約84km)にわたる光ファイバーの「量子ループ」上で、量子リピーターの力を借りずにエンタングル状態を維持する実験に成功している。このネットワークは間もなくDoEの研究所の1つに接続され、80マイル(約129km)の量子伝送テストに用いられる予定だ。

 EUでは、2018年に量子インターネットの構築戦略を推進するためにQuantum Internet Allianceが結成され、2019年にはエンタングル状態にある素粒子を31マイル(約50km)離れた場所に伝送するというデモンストレーションが実施されてもいる。

 量子力学の研究者らの目標は、まずネットワークを国家レベルにスケールアップした上で、さらに国家間のレベルに拡張するというものだ。科学者の大半は、その実現に数十年はかかると考えている。量子インターネットは間違いなく長期にわたるプロジェクトであり、行く手にはまだまだ数多くの課題が待ち構えている。しかし、同テクノロジーを追求する過程で必然的にもたらされる思いがけない成果は、今はまだ想像もできない突飛とも思える数多くの量子アプリケーションとともに科学の価値ある発展に貢献するだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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