リモートワークやリモート教育は、どこからでも仕事や教育ができるようにすることを軸とした1つの戦略へと変化しつつある。この進化は、新たなイノベーションサイクルの発端になる可能性が高い。
この変化は、単なる言葉だけのものではない。リモートワークとリモート教育にシフトする動きが始まったのは、新型コロナウイルスの蔓延が発端だった。しかし、どこからでも仕事ができ、どこでも学べる「Work/Learn from Anywhere」への移行は、もはや一時的なものではなく、思考と実験と投資を必要とする生産性向上戦略になっている。
実際、企業幹部を対象とした米TechRepublic Premiumの調査では、回答者の13%が、2021年のIT予算編成でもっとも重要な項目にリモートワークのためのテクノロジーを挙げている。新型コロナウイルスがIT部門の優先順位にどのような影響を与えたかという質問では、回答者の26%が従業員の在宅勤務を可能にするためのリモートワーク関連技術に対する支出増を挙げ、22%はセキュリティに対する支出を増やすと回答し、19%はIT部門のスタッフの多くは恒常的に在宅勤務になると答えた。
Work/Learn from Anywhereへの移行は、IT企業の業績発表カンファレンスコールでも繰り返し取り上げられている。よく出てくる議論は、Work/Learn from Anywhereを可能にしたベンダーが競争に勝利するというものだ。リモートワークの生産性と柔軟性を活用した企業が勝利するという議論もよく聞かれた。単純に言ってしまえば、従業員がコストの高い都市部から他の地域へと逃げ出しつつあることを考えれば、この状況が後戻りすることはないかもしれないということだ。
2021年にはWork/Learn from Anywhere戦略を可能にするためのITインフラが構築され、その後数年で、その環境が洗練されていくことになるだろう。
Work/Learn from Anywhereを可能にするための取り組みを急ぐベンダー
リモートワークブームが起こっていることは明らかだ。HP Inc.は、ノートPC需要の大幅な伸びを受けて第3四半期に好業績を上げ、新しい「Z」シリーズワークステーションなどをリリースした。HPのワークステーション事業担当ゼネラルマネージャーJim Nottingham氏は、「PCには新たな役割があり、PCの存在は必要不可欠である」ことが明らかになったと述べている。
Nottingham氏は、「クリエイターやパワーユーザーの80%は、フルタイムまたはパートタイムでの在宅勤務を望んでいる」と話している。これは、リモートからアルゴリズムを構築したり、動画を編集したり、設計したりすることができるシステムを開発する必要があることを意味している。
Dell Technologiesは、Work/Learn from Anywhereへの移行が進む中、VMwareやPC事業を抱えていることが強みになっている。Intelもパートナーと協力し、リモートワークの時代に向けた新たなノートPCのプラットフォームに取り組んでいる。
またZoomは、新たな仕事と教育のあり方が望まれる時代の寵児だと言っていいだろう。同社の成長ぶりは途方もないものだが、そのすごさはグラフを見てもらえば一目瞭然だ。