これまで以上に高まりそうなデジタルレイバーの需要
以上が発表の概要だが、今回このサービスを取り上げたのは、デジタルレイバーを遠隔監視し、運用を支援するという最先端のソリューションであると同時に、RPAの普及拡大ぶりを物語る動きだと感じたからである。
なお、日本IBMによると、AOCC(図2)は2017年1月にサービスの提供を開始し、継続的な機能拡張と改善を図ってきた中で、これまではインドのバンガロールとプネ、フィリピンのマニラで英語圏の顧客に向けて支援を続けてきた。加えて、このたびツールの日本語対応を終え、中国の大連でも日本向けに日本語でのサービスを提供できる運びとなったという。こうしたIBM内部の動きも、今回の発表の背景にあったようだ。
図2:AOCCの外観と運用、監視画面イメージ(出典:日本IBM)
今回の発表に際して、筆者が思いついたことを2つ述べておきたい。
1つは、RPAソフトウェア大手ベンダーの幹部から、ポストコロナを見据えたRPAの在り方について最近こんな話を聞いた。
「今回のコロナ騒動を契機に、RPAに対する見方が変わるのではないか。これまでRPAは自動化をキーワードにROI(投資対効果)を高めるためのツールと見られてきたが、これからはその自動化が従業員の安全を守るとともに事業を継続していく上で不可欠になっていくという手応えを強く感じている」
「自動化が従業員の安全を守るとともに事業を継続していく」というのは、まさしくデジタルレイバーに求められるニーズである。今後、デジタルレイバーの需要はこれまで以上に高まりそうな気がする。
もう1つは、本連載でこの1カ月余り、今回を含めてRPAを題材にした記事が3本掲載されたことだ。
ちなみに、1本目は8月6日掲載の「RPAのROI改善へ、KPMGコンサルティングがユニークな新サービスを投入」で、「RPAクイック診断サービス」を取り上げた。2本目は9月3日掲載の「RPAに精通したコンサルティング会社による『RPAオンライン研修サービス』とは」だった。
つまり、今回の日本IBMを合わせて、1カ月余りに「診断」「研修」「運用監視」といったRPAの使用環境を支えるサービスを相次いで取り上げた格好となった。これは「気になるIT」連載としてRPAには注目しているものの、意図した選択ではない。筆者の目から見れば、RPA市場がそれだけ活発に動き、普及拡大していることを物語っている。これが実感である。読者の皆さんはいかがだろうか。