SAPジャパンは9月15日、企業のインダストリー4.0化戦略の具現化を支援するグローバル組織「Industry 4.Now HUB TOKYO」を設立した。
(左から)SAPジャパンの宮田伸一氏、Sinead Kaiya氏、鈴木章二氏
SAPは、企業のインダストリー4.0化を再加速させるためのプログラム「Industry 4.Now」を2020年から推進しており、企業による取り組みを具体的に支援する組織として「Industry 4.Now HUB」を組織化した。現在は日本、ドイツ、米国の3拠点での展開になる。
SAPジャパン 常務執行役員 クラウド事業統括の宮田伸一氏は、同社のインダストリー4.0戦略について振り返り、2019年8月5日に設立した共創イノベーション施設「SAP Experience Center Tokyo」と「SAP Labs Japan」は、1年間で約5000人以上の顧客やパートナーが利用しており、デジタル変革(DX)の共創拠点として毎日フル稼働しているとアピール。SAP Experience Center Tokyo内に新設されたIndustry 4.Now HUB TOKYOについては、「グローバルの知見を生かし、日本企業と協業して日本の製造業のDXをさらに推進する」と意気込みを語った。
SAPの推進する インダストリー4.0
SAPジャパンの常務執行役員でSAP Labs Japan マネージングディレクターのSinead Kaiya氏は「SAPではインダストリー4.0の焦点を、これまでの工場を中心とした取り組みから、企業全体の経営戦略を柱に据えた取り組みへのシフトだと考えている。Industry 4.Nowは『製造オートメーション』と『事業横断のビジネスオペレーション』を統合した取り組みになる」と説明した。
SAP Labs JapanでHead of Digital Supply Chain Managementを務める鈴木章二氏によると、現在、多くの企業がインダストリー4.0化を重要な経営課題と捉えているが、その取り組みは依然としてPoC(概念実証)段階の企業が大半で、PoC後の拡大展開戦略も描けていないという。一方で、4割近くの企業が予算を超過し、プロジェクトが遅延している状態にある。
また、インダストリー4.0化の取り組みは、組織的にもシステム的にも製造現場の中に閉ざされ、情報が分断されているのが実状だと同紙は指摘した。
Industry 4.Now HUBは、インダストリー4.0化して実際に効果があるもの、価値があるものをショーケースで示すとともに、リアルとバーチャルなワークショップを通じて問題意識の顕在化やアイデアの創出を支援する場を提供する。
Industry 4.Now HUB TOKYOでは、三菱電機と協力してショーケースを用意。ダブルシートバルブを製造販売する製造業を想定し、バルブヘッドユニット組立工程における顧客注文時選定仕様の連携と製造現場における協働ロボットの活用について紹介している。
三菱電機と協働で構築したショーケース
また、SAPのインダストリー4.0対応製品を学習するためのオンラインコンテンツを用意する。「Industry 4.Now Academy」を通じてSAPのナレッジを提供することで、インダストリー4.0の推進に必要な人材の育成を支援する。
インダストリー4.0化には「業界・業種の枠を超えたオープンなエコシステムも重要」と鈴木氏は話す。SAPは、インダストリー4.0の取り組みを共同推進する世界的なアライアンス「Open インダストリー4.0 Alliance」の創立メンバーであり、既に60社以上が参加しているという。これらのアライアンスパートナーによる包括的なソリューションの提供も可能としている。
その上で、鈴木氏は「インダストリー4.0ロードマップの加速化を検討するお客さまのためのワンストップショップになりたい」と強調した。
Industry 4.Now HUBの概要