業務のデジタル化ではない--「コロナ禍で10年早まった」で考えるべき地銀のDX - (page 2)

阿久津良和

2020-09-16 06:45

 「(利用者数)4000人が多いか少ないか意見が分かれるところだが、中長期的には(投資信託金額)1000億円超を目指す。そのためにはウェルスナビとの提携が欠かせない」(福田氏)

 同行は2020年にサブシステムの内製化、2021年には法人向けクラウドバンキングの提供、勘定系クラウドのIaaS化など各所のデジタル化に取り組んでいるが、その理由は「地域社会全体の品質を向上させるのが真の目的」(福田氏)だと説明する。地銀のDX化については多くのフィンテック企業が提携を提案しているが、選択する判断として「理念、価値観を違いに共感、共有できる相手とビジネスに取り組む」(福田氏)と述べた。

ACSiON CSO 兼 事業開発グループマネージャー 竹内進氏
ACSiON CSO 兼 事業開発グループマネージャー 竹内進氏

 本人確認プラットフォームや不正検知プラットフォームなどを手がけるACSiON(アクシオン、千代田区)は、セブン銀行と電通国際情報サービス(ISID)の合弁会社であり、2019年7月に創立。同社は本人確認プラットフォーム「proost(プルースト)」による“電子本人確認(electronic Know Your Customer:eKYC)”市場が抱える課題解決を目指してきた。

 同社によれば、利用者がサービスを利用する際に本人特定事項を入力しなければならず、事業者側もコスト増や顔写真といった最新情報の取得が難しい。当然ながら各事業者は個別に本人認証システムを用意しなければならずコスト増につながってしまう。

 また、複数アカウントや偽造免許証の利用例も増加しており、不正検知機能も欠かせない。このような背景から同社はproostと不正検知システムの「Detecker」を組み合わせたサービスを2020年10月から提供する。

 当面はスマートフォンで動作し、2021年からはセブン銀行のATMによる稼働も予定。すでに静岡銀行が2020年8月に採用を決定している。ACSiON 最高セキュリティ責任者(CSO)兼 事業開発グループマネージャー 竹内進氏は「proostで事業者のコストダウンや地域活性化を目指す」と今後の展望を語った。

マネーフォワード 執行役員 神田潤一氏(Fintech協会理事)
マネーフォワード 執行役員 神田潤一氏(Fintech協会理事)

 個人向けに資産を可視化する「Money Forward ME」、法人向けにはビジネス向けクラウドサービス「Money Forward クラウド」を提供するマネーフォワードの神田氏は、現状について「DX戦略の差が地銀を二極化する分かれ道」と分析する。

 多数の金融機関向けにデジタル通帳アプリケーションを開発する同社の調査によれば、新型コロナウイルスの流行前と流行後を比較すると、利用者数が約1.7倍に増加。数字からもコロナ禍に対する消費者の行動変容が明白だが、先の発言はこの変化をDX戦略で先回りできた地銀だけが生き残れるという意味だ。

 同社は法人向け製品戦略として、法人向け資金管理サービス「Business Financial Management(BFM)」を進めている。法人顧客と金融機関をつなぐ事業者向け資金管理サービスだが、すでに岡崎信用金庫が導入を進めているという。

 同社は今後、顧客利便性向上を基点にしたインターネットバンキング活性化やデータ蓄積を短期的利点、データ活用による営業生産性の向上やオンライン収益機会の開発を中長期的利点として金融機関に提案していく。

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