Oracleは、「TikTok」や「Zoom」のようなクラウドを活用しようとする大手企業を顧客として獲得することで、IaaS分野の野望に向けてまい進していこうとしている。
字節跳動(バイトダンス)は、同社が運営するTikTokの米国事業をMicrosoftに売却する道を選ばず、Oracleを米国市場でのパートナーとして選択した。これは、米国と中国の間でテクノロジーやプライバシー、データをめぐる摩擦が高まる中での決定だった。
Oracleはバイトダンスとの提携について、声明で以下のように述べている。
OracleはSteven Mnuchin米財務長官による声明の内容、すなわちバイトダンスが週末に米財務省に提出した資料の中で、Oracleが信頼できるテクノロジーパートナーの役割を果たす旨の提案がなされていたとする内容が事実であることを認める。当社は、セキュアかつ性能の極めて高いテクノロジーソリューションを提供するという実績を40年にわたって積み重ねてきている。
TikTokをめぐるこの提携が最終的にどういったものになるのかは明らかにされていないが、Oracleは実質的に米国におけるTikTokアプリのデータのホスティングとセキュリティを担当することになる可能性がある。OracleとTikTokという組み合わせは不自然に思えるかもしれないが、アナリストらは金銭の流れに目を向けるよう述べている。
EvercoreのアナリストであるKirk Materne氏はリサーチノートに以下のように記している。
Oracleをめぐる疑問は、クラウド事業での成長の勢いがいつ、より一貫性のある収益拡大につながるのかというものだ。そういった点でTikTokの貢献が期待できる。TikTokのクラウド支出は、(「Snapchat」の開発元である)Snapと同程度、すなわちOracleの年間売上高に2~3億ドル(約210~320億円)寄与し、総売上高を0.5~1%押し上げることになると推定される。なお、この数字はTikTokの米国資産のみを対象としており、結果的に高額ということになる可能性があると留意しておくのがよいだろう。また、たとえ年間売上高の増加が1億ドル(約110億円)だったとしても、今回の提携によってOracleのパブリッククラウド市場での信頼性がさらに向上するとわれわれは確信している。
Constellation ResearchのプリンシパルアナリストであるRay Wang氏も、この提携を前向きに評価している。OracleにとってTikTokを顧客に抱えることは、ワークロードをめぐる激しい戦いでの勝利を意味しており、アプリデータと「Oracle Data Cloud」を組み合わせたアドネットワークに向かう流れを作り出せるようになる可能性もある。またOracleは、米国および中国との間で外交上のポイントを稼いだとも言える。Wang氏によると「TikTokを勝ち取ったOracleの手腕は、クラウド戦線やアドテック戦線、地政学的な貿易戦争における会心の一撃だ。アドネットワークやポータル、クリエイティブオプティマイザー、トレーディングデスク、広告仲介業者のトップ20社の80%以上が『Oracle Data Marketplace』からのデータを活用している中、TikTokによってこういった優位性がさらに強化される」という。