Linuxの3大企業であるCanonical、Red Hat、SUSEのうち、「Fedora」を提供するRed Hatと、「openSUSE」を提供するSUSEは、それぞれ自社のLinuxディスリビューションのためのコミュニティーを持っている。ユーザーと開発者から成るこれらのコミュニティーは、各社のリリースと密接に関連しており、その方向性について発言権がある。しかし、Canonicalが提供する「Ubuntu Linux」には、それが欠けている。
たしかに、Ubuntuコミュニティーは存在する。そして過去には、コミュニティーの戦略・管理の専門家であるJono Bacon氏がコミュニティーを率いて、Ubuntuの前進を支援してきた。しかし、Bacon氏が6年前にUbuntuコミュニティーを去って以来、その役割は縮小した。またUbuntu Community Council(Ubuntuコミュニティー評議会)もあったが、徐々に妥当性を失ってしまった。そして最近になり、一部のUbuntu開発者らは、現状を変える必要があると考えるようになった。
元Ubuntu開発者のbkerensa氏が、ユーザー向けフォーラムの「Ubuntu Community Discourse」に、Canonicalの最高経営責任者(CEO)でUbuntuの生みの親であるMark Shuttleworth氏は、「コミュニティーを見捨てて、ガバナンスの崩壊に対して沈黙している」と投稿して、端緒を切った。
同氏は、「Shuttleworth氏はもはや、コミュニティーに価値を見出していないようだ。そのためコミュニティーがパートナーであるとは感じておらず、フィードバックを求めたり、やり取りしたりする必要性がないと考えているようだ」と述べた。そしてShuttleworth氏が、「(Ubuntuの)商標を所有する正式なUbuntu Foundationを設立し、Canonicalのスタッフがボードメンバーの大半を占め、コミュニティーからも数人が参加する、役員会を設けるべき」だと提案した。
bkerensa氏が言うことにも一理ある。Ubuntu Community Councilは実質的に、機能するのをやめてしまった。以前はInternet Relay Chat(IRC)を使い、Ubuntuの方向性や改善方法について、隔週で話し合っていた。
Shuttleworth氏はそれに対して、「人々がフラストレーションを感じている」のは理解できるが、関心を失ってしまったわけではないと回答した。実際は、「すべての関心事や懸念事項を棚上げにし、Ubuntuが長期的に持続可能な位置につけるように取り組んでいた」と説明。
そして、それは事実でもある。Shuttleworth氏はUbuntuの顔として、その成功に心を砕いてきた。デスクトップ環境以外にも、より収益性の高い、クラウド、IoT、「Kubernetes」で主要プレーヤーとなるべく傾注してきた。実際、そのおかげでCanonicalが現在は「自立」しており、同氏の個人的な資金をつぎ込む必要がなくなったと、同氏は最近述べている。
また同氏は、Ubuntu Community Councilは関心不足のため徐々に衰えてしまったと指摘。「献身と判断力が必要な、本当の意味で満足のいく仕事ができるコミュニティーリーダーシップの機能を再構築しつつ、尽力してくれた人々に報いる方法について、決断できずにいた」とも説明した。
こうしたやり取りが行われる中、Ubuntu開発者のWalter Lapchynski氏が、コミュニティー評議会を立て直し、第1回の選挙を運営するボランティア役を買って出て、Shuttleworth氏がその申し出を受け入れた。
Lapchynski氏は、次のように発表した。「今期、7つの役職をすべて選出し、任期は2年間となる。候補者としての資格要件は、Ubuntuのメンバーであることだ。Ubuntuコミュニティーに関する理解が深く、有能で、リーダーとしての素質を備えているのが理想的だ」
候補者を推薦・自薦したい場合は、community-council@lists.ubuntu.com宛に、名前とLaunchpad IDを送ればよい。締切日は、2020年9月29日の協定世界時(UTC)11:59時だ。
推薦・自薦を受付後、Shuttleworth氏が最終候補者を絞り込み、Condorcet Internet Voting Serviceを利用して投票を行う。Ubuntuメンバーは全員、投票資格がある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。